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長谷部誠がいま感じる幸福と無力。
「心からサッカーを楽しめている」 

text by

戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byGetty Images

posted2020/08/25 11:40

長谷部誠がいま感じる幸福と無力。「心からサッカーを楽しめている」<Number Web> photograph by Getty Images

ドイツ・ブンデスリーガで14年目のシーズンを迎える長谷部誠。サッカーができる幸せを感じながら、静かな闘志を燃やす。

自己嫌悪と無力感の先に見えた。

 新型コロナウイルスの感染は、経済活動の再開によって再拡大している。ブンデスリーガは9月19日の開幕を予定しているが、不透明感を抱えたままの運営となっていきそうだ。

 突如として世界を襲ったコロナ禍に、長谷部も心を揺さぶられた。暗闇のなかを手探りで進むような時間を過ごしながら、サッカーについて、人生について考えた。

「サッカー選手としての無力さをすごく痛感しました。いままで感じていたサッカー選手としての自分、サッカー選手として子どもたちに伝えていたものは、自分の勘違いだったんじゃないかと自己嫌悪に陥ることもあって」

 サッカー選手として何ができるのか、何をすべきなのか。はっきりとした答えを、導き出せたわけではない。たくさんの思いが頭のなかを行き来しながら、それでも言えることがある。

「無力さを乗り越えて改めていま思うのは、自分たちの発信に対して子どもたちやファンの方々が反応してくれることで、やはりサッカーの力を確認できたということです。世界中が大変なときに何かを発するのは難しいし、難しさを考えてしまうと余計に発信ができなくなる。でも、こういうときだからこそ、自分たちが何かを伝えていく価値を考えていかないといけないし、そこはまだ葛藤しているところがありますが、サッカーの力、スポーツの力を信じて自分はより積極的にやっていきたいと感じました」

 ドイツで戦う日本人フットボーラーとして、フランクフルトのリベロとして、世界の最前線でプレーする日本人アスリートとして、長谷部は湧き上がる思いをプレーに込めていく。キャリアの円熟期を迎えた36歳は穏やかな闘志を胸に秘め、新しいシーズンを迎えようとしている。

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