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長谷部誠がいま感じる幸福と無力。
「心からサッカーを楽しめている」
posted2020/08/25 11:40
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
表情が生き生きとしている。フレッシュなモチベーションに、心も身体も包まれているようだ。ドイツ・ブンデスリーガで14年目のシーズンを迎える長谷部誠である。
昨シーズンは偉大な記録を打ち立てた。元韓国代表の車範根が持つブンデスリーガのアジア人最多出場記録を、およそ30年ぶりに更新したのだ。
当時とは外国人枠が違うことなどから、「昔のほうが大変だったと思います」と長谷部自身は控え目だ。「僕自身はいい監督、いいチーム、いい仲間に巡り合えた。それについては感謝しかないですね」と穏やかな口調で話す。
「リベロはホントに面白いですよ」
ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かりながら、なおも豊かなキャリアを築いている要因のひとつに、'16-'17シーズン途中のリベロ転向があげられるだろう。新境地を開くきっかけを与えてくれたニコ・コバチ監督を、長谷部は親しみを込めてファーストネームで呼んだ。
「ニコが僕をリベロにコンバートしてくれて、それは自分自身まったく想像していなかったし、周りの選手たちも想像していなかったと思うんですが、僕のサッカー人生の転機になったと思います。実際にプレーしていて、ホントに面白いポジションだなと。フィールドプレーヤーの一番後ろの真ん中からピッチを見渡せて、ゲームを組み立てていって。中盤でプレーするより時間を持てるので、そういう意味でより多くの選択肢を持てるというか、そこに楽しみを感じていますね。守備については自分の特徴でもある予測とか試合を読む部分で、能力を発揮できる。経験を生かすこともできますし、ホントに面白いですよ」