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長谷部誠がいま感じる幸福と無力。
「心からサッカーを楽しめている」 

text by

戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byGetty Images

posted2020/08/25 11:40

長谷部誠がいま感じる幸福と無力。「心からサッカーを楽しめている」<Number Web> photograph by Getty Images

ドイツ・ブンデスリーガで14年目のシーズンを迎える長谷部誠。サッカーができる幸せを感じながら、静かな闘志を燃やす。

巡りあわせや運に恵まれた。

 リベロというポジションは、ドイツでは特別なものだろう。世界のサッカー界のレジェンドであるフランツ・ベッケンバウアーが確立し、ローター・マテウスやマティアス・ザマーが後継者となった。

 その一方で、戦術のトレンドに左右されてきたポジションでもある。長谷部の見立ては正鵠を射る。

「ドイツではベッケンバウアーやマテウスがプレーしたポジションとして、すごく親しみがあると思うんですが、近年は4バックが主流になっていたので、3バックでやるチームは多くなかったですよね。3バックでやるチームもリベロというよりセンターバックのような選手を置くことが多かったんですが、ここにきて改めてリベロの価値が評価されてきたところで、自分自身がそこに当てはめられたのは、ホントに巡りあわせとか運に恵まれたというか」

 36歳の素直な心境も明かす。飾りのない言葉が、充実ぶりをうかがわせる。表情にも笑みが浮かんだ。

「心から楽しめる。嬉しいこと」

「まあ正直なところ、いまの自分がブンデスリーガで中盤の選手としてプレーして、毎試合ガンガン動くようなプレーは厳しいと思うんです。フィジカルコンディションを考えても、リベロというポジションはすごく合っている。色々な要素が重なり合って、引き寄せることができたものだと思っています」

 質問に丁寧に答えるのはいつもどおりだが、言葉が弾んでいる。「若いころとは違った楽しみを、感じることができているのでは?」との質問に、長谷部はゆっくりと頷いた。

「この年齢になって自分のなかで、サッカーをすごく、ホントに、心から楽しめるというのがあります。試合に出られないときの悔しさや葛藤はもちろんあるんですけれど、やっとこの年齢になって心からサッカーを楽しめている。いままでは正直、ちょっとこう苦しいなという部分が大きかったんですが、いまは心から楽しく思える。それはすごく嬉しいことですね」

【次ページ】 そんなに長く続けることはできない。

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