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史上初“バロンドール”中止の顛末。
世界一のサッカー雑誌で何があった?
 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byFranck Seguin/L'Equipe

posted2020/07/30 20:00

史上初“バロンドール”中止の顛末。世界一のサッカー雑誌で何があった?<Number Web> photograph by Franck Seguin/L'Equipe

毎年1回、世界最高のサッカー選手に与えられる賞「バロンドール」。最多受賞者はリオネル・メッシの6回。

「選手達を同じ基準で評価できない」

 フェレは『レキップ』紙の中で、エルベ・プノー記者の質問にこう答えている。

「1年間中断するのは決していい解決策ではない。だが、最も悪くはない決定であり危険の少ない決定である。またバロンドールの信頼性と正当性を最も損なわない決定でもある」

 FF誌にとってのバロンドールは、日本で言えばNHKの紅白歌合戦、文藝春秋の芥川龍之介賞・直木三十五賞、世界的な価値でいえばアカデミー賞のようなものである。

 そのバロンドールをどうするかは、新型コロナウイルスによる被害が世界規模で拡散しだしたときから編集部内で議論されてきた。

「時間の経過とともに状況は複雑になった」とフェレはいう。

「EURO2020も東京五輪も延期になった。CLも異例の形式でおこなわれる。あるチームはリーグ再開後10試合を経て臨めるのに、別のチームは大会までに1~2試合しか公式戦をこなせない。同じ基準での評価ができない。

 この決定が論議を呼ぶのは当然だ。だが、バロンドールという賞の選考基準からしても、最も賢明な選択であるのは間違いない。2020年の勝者を選ぶべき理由は何もない」

一番の被害者はレバンドフスキか!?

 妥当な決定であるとはいえ、フェレが述べるように問題もある。最も深刻なのは、中止によって受賞の可能性を絶たれた選手たちである。

「選手やその周辺の人々には、これから真意を説明する。これは誰か特定の人物に対する決定ではない。あくまでもバロンドールの正当性を護るための決定であることを理解して欲しい」

 おそらく最大の被害者は、ブンデスリーガ得点王でここまで今年の最有力候補と目されていたロベルト・レバンドフスキだろう。

 実際、筆者のもとにも、ポーランドの記者から「中止をどう思うか?」「現時点で投票するならば誰を選ぶか?」「レバンドフスキの可能性は?」という質問が寄せられた。また、レアルのリーガ優勝の立役者ともいえるカリム・ベンゼマも、大きなチャンスを逃したかも知れない。

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