熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ペレは英雄、「マイアミの奇跡」で
GKジダは?ブラジル特有の人種問題。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byREUTERS/AFLO
posted2020/07/29 17:00
アトランタ五輪、日本戦でロングボール処理を誤ったアウダイール(左)とジダ。試合後、2人はいわれもない批判を浴びたという。
新型コロナの犠牲者の割合も。
フットボールの試合をスタンドで観戦していた時のこと。観衆が対戦相手の黒人選手を「マカッコ」(猿)と罵るのを聞いたことがある。
またテレビドラマでは、豪邸に住んで優雅な生活を送るのは白人で、その家で働くお手伝いさんや運転手やガードマンは黒人か混血と相場が決まっている。それはもちろん、現実が概ねそうなっているという側面がある。
黒人や混血の人々の多くは、中流以下の階層に属する。住宅環境が劣悪だったり、危険を承知で外へ出て働かなければ生活が成り立たない人が多い。新型コロナウイルスの犠牲になる確率も白人に比べて格段に高い現実もある。このような現実がある最大の理由は、やはり教育の機会が均等ではないからだろう。
ブラジルの場合、人種差別は他国より緩やかではあっても存在はしている。ひょっとしたら、その緩やかさゆえにブラジル社会で、そしてブラジルのフットボール界で人種差別を根絶するのは、欧米諸国と同様もしくはそれ以上に困難なのだろうか。
人間の業の深さを感じないではいられない。