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マイアミの奇跡から20年――。
前園と川口が語る、五輪に出る価値。
posted2016/02/04 12:05
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Tadashi Shirasawa
うぉー、ヨシカツ!
あーっ、ゾノさん!
Number895号で実現したスペシャル対談。アトランタ五輪代表のキャプテンと守護神は、取材現場で顔を合わせた瞬間、満面の笑みで熱い抱擁を交わした。
まるで20年前のマレーシア、シャーアラムスタジアムの光景である。日本代表が28年ぶりに世界への扉を開いたアトランタ五輪アジア最終予選準決勝のサウジアラビア戦は、壮絶な死闘となった。後半12分までに前園真聖が2ゴールを決めたが、その後は一方的にサウジアラビアの猛攻を浴びる。後半22分にはオバイド・アルドサリにゴールを許し、1点差に。以降もサウジアラビアのFKが何本も続いた。あの時間帯、前園と川口能活はどんな思いでボールを追っていたのか。
チームを引き締めた、キャプテン前園の“本気”。
前園 3年くらい前に、初めてサウジアラビア戦の映像をフルに見たんです。それまでは自分のゴールシーンや能活のスーパーセーブの場面ぐらいしか印象になかったんですけど、見返すと、本当に危ない展開でしたね(笑)。よく耐え切ったなって。でも、みんな気持ちを切らしていなかったし、相手に押し込まれていたけど、決められる気もしなかったんです。
川口 ゾノさんが、相手のFKのときにチームを鼓舞したんですよ。ゾノさんのあんな姿、初めて見た。あれでチームの空気が変わりましたね。
前園 あれ? 俺、いつも鼓舞してなかったっけ(笑)。
川口 それまではキャプテンシーをプレーで見せていた分、ギャップにやられたというか(笑)。気持ちを前面に出す、ゾノさんの本気を見た。GKの位置からは、スタジアムの時計が見えるんです。サウジにずっと攻められて、FKが何本も続く中、時計の針は全然進まない。本当に苦しかったんですけど、ゾノさんが鼓舞する姿を見て、また守備陣が締まった。
試合終盤、日本は貴重なCKを獲得した。キッカーは、前園。ところが助走を始めた直後、激しく転倒し、レフェリーに足の痛みを訴える。極限状態での大芝居。誰が見てもわざと転んだのは明らかだったが、時計の針は確実に進んだ。
前園 もっとうまく転べましたね(笑)。
川口 良い意味で、あれでスーっと僕らの力が抜けたんですよね。