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テニスファンの平均年齢は64歳!?
セリーナのコーチ仕掛ける大改革。
posted2020/07/10 11:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
AFLO
世界1位のノバク・ジョコビッチがリードした『アドリア・ツアー』は多数の新型コロナウイルス感染者を出し、あからさまな<失敗>に終わったが、ヨーロッパではもう1つ注目のイベントが同じ日に幕を開けていた。
セリーナ・ウィリアムズのコーチとしても有名なパトリック・ムラトグルーが打ち出した『UTS(Ultimate Tennis Showdown=究極のテニス対決)』と称するプロテニスマッチ。彼が南フランスで経営するムラトグルー・テニスアカデミーで6月13日から毎週末に行われ、10人の出場者が2試合ずつ戦う全10試合をオンライン中継してきた。出場者は同アカデミーの看板選手、ステファノス・チチパスをはじめ、ドミニク・ティーム、ダビド・ゴファンといったトッププレーヤーたちだ。
テニスは今のままではダメだ。
ただしこの『UTS』の目的は、コロナ禍で実戦の場を失った選手のためとか、ツアー再開に向けての準備といったものだけではない。発端は以前からムラトグルーが抱いていた現在のテニスに対する問題意識だ。
「テニスは若いファンを取り入れることに失敗している。今のままではダメだ。大きく変えていかなくてはならない」
そう主張してきたムラトグルーにとって、この『UTS』の構想はテニスの大改革のための試みであり、コロナ禍によるツアー休止はその試みを実践するにはもってこいのチャンスだった。
ルールは通常のテニスと完全に異なる。まずゲームやセットという考え方はなく、10分間を1クォーターとしてその中でどちらが多く得点するかで争う。サーブは2ポイントずつで交代。テニスは時間が読めないという短所(それがおもしろさでもあるのだが……)がこれで消える。見たい選手の、見たい試合にきっちり合わせてテレビやパソコンの前に座ることができる。