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稲葉篤紀と宮本慎也の2000本安打。
「献身」で積み上げた18年の軌跡。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byL:Takahisi Shimizu/R:Naoya Sanuki
posted2020/06/16 11:30
稲葉が打った6日後、宮本も2000本安打に到達。奇しくも同じ1976試合目での偉業達成だった。野村克也から学んだ「献身」の姿勢が実を結んだ。
躊躇しない稲葉、基本通りの宮本。
4月28日。1回2死一、二塁から4球目を打った稲葉の2000本目の安打は、右前に糸を引くライナー性の当たりだった。
「う~ん……先取点がとれるかどうかというチャンスだったんで、気負うことなく走者を還そうと打席に立った。ケンスケ(二塁走者の田中賢介)がセーフになって、ようやく“ああ、達成したんだな”という感じになりましたね」
ボールを呼び込んで思い切りよく叩く。躊躇しないスイングは、還すバッティングをするときの稲葉の特長だった。
それから6日後の5月4日。神宮球場での広島戦の2回無死一塁から、宮本は41歳5カ月と史上最年長の2000本安打を中前に弾き返した。
「下が湿っていたので基本通りにピッチャーの足元を狙った」
これも、宮本らしい狙いから生まれたメモリアル安打だった。
野村からは「一流の脇役になれ」と言われ続けてきた。そのことを問われると、宮本はこう胸を張った。
「脇役の一流にはなれたかなと思います」
奇しくも2人が記録を達成したのは同じ1976試合目。ベンチと戦った1年目から、18年間の歳月が流れていた。
(Number803号『[偉業達成までの軌跡]宮本慎也と稲葉篤紀 “献身”で積み上げた2000本』より)