フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ブラジル代表監督チッチが大胆告白。
「ネイマールは代替不能な存在でもない」
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byYann Le Duc/L'Equipe
posted2020/06/15 11:45
情熱的でありながら、一方でブラジル代表の指導者として気品ある静けさも身にまとうチッチ代表監督。
「繰り返すが理想はすべてできることだ」
――そのためにはさらに選手が必要ですか。現在のブラジル代表は、プレーのあらゆる局面において効率的であるといえますか?
「それこそが私の大いなるチャレンジだ。監督はいかなるときも適応しなければならない。試合に対して、それぞれの状況に対して、相手との力関係に対して。そうした異なる状況に対して代表監督は、幸いにして自身の理念に即した選手を起用することができる。
クラブの監督だったときは、私自身が選手のグループに適応しなければならなかった。
2012年にコリンチャンスでクラブWCに優勝したときは、攻守の切り替えが素早くカウンターに長けたチームが決勝でチェルシーを破った(結果は1対0)。だが2015年にブラジルチャンピオンになったときは、ブラジルスタイルを実践する《美しい》チームだった。それに相応しい選手を得たことで実現が可能になったからだ。インテルナシオナルでも同様で、2008年と09年のチームは《ジョゴ・ボニート=素晴らしいプレー》を実践することができた。
繰り返すが理想はすべてできることだ。あなたの質問に戻れば、ひとつかふたつのポジションが以前よりも弱いと認めざるを得ない」
「中盤のつなぎ役がいないのは明らかだ」
――それはどのポジションですか?
「中盤のつなぎ役がいないのは明らかだ。かつてのファルカンのような選手だ。今日でいうならデブライネのようなタイプで、低い位置でプレーしながらカゼミーロを助けることができる。同時に攻撃に加わったときは、より高い位置で積極的に絡んで創造力とスピード、衝撃をもたらす。
リヨンと契約したブルノ・ギマラエスは東京五輪南米予選の最優秀選手でもあり、このポジションで大きなポテンシャルを持っている(3月末に予定されていたWC南米予選のボリビア戦とペルー戦では初めて代表に選出された)。ミランでプレーするパケタにも可能性を感じる」
――サイドバックにもかつてのような人材はいません。
「左はロディが最近頭角を現した。彼の攻撃力は面白い。不安は右の方が大きい。ダニエウ・アウベスは依然としてプロフェッショナリズムの手本であり、そのメンタリティは卓越している。身体のケアも他の選手とは全然違うしプレーも追随を許さない。しかしもう37歳で……。
後に続くのはダニーロだが、怪我で今季は代表でほとんどプレーしていない。またアレックス・サンドロは、どちらかといえばイタリアタイプの力強いディフェンダーだ。
ただ、こうしたことはしばしば世代の問題でもある。今、ブラジルはふたりの偉大なGKを抱えている(アリソンとエデルソン)。かつて1度もなかったことだ」