フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ブラジル代表監督チッチが大胆告白。
「ネイマールは代替不能な存在でもない」
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byYann Le Duc/L'Equipe
posted2020/06/15 11:45
情熱的でありながら、一方でブラジル代表の指導者として気品ある静けさも身にまとうチッチ代表監督。
ネイマールはどう起用するのがベストでしょうか?
――それではネイマールの質問をする前に、アリソン―チアゴ・シウバ、マルキーニョス―カゼミーロ―フィルミーノという縦のラインには何の懸念もありませんか?
「ない。私のチームには異なるプロフィールとキャラクターを持つ複数のリーダーがいる。彼らは私の仕事を助けてくれるし確信を与えてもくれる。テクニカルで創造力に溢れたリーダーや、チームを統率し戦うものたちの先頭に立つリーダー……。
他にも存在感を現しつつあるものたちがいる。リバプールに移籍してからのファビーニョがそうで、新たな次元に到達した。またガブリエル・ジェズスは私が19歳で代表デビューさせたが、今も成長を続けながら成熟しつつある」
――ネイマールはどう起用するのがベストでしょうか?
「試合の度ごとに私は同じ質問を繰り返している。どうすれば最大限を引き出せるか。彼の周りにバランスの取れたチームを構築できるのか……。
PSGの彼は、ムバッペやイカルディ、カバーニとともに4-4-2のアタッカーとしてシステムによく順応している。だが、クラブと代表の両方を通して彼にとってベストだったと私が考えるのは、バルセロナ時代のポジション――左サイドでプレーしながら最後は中央に切り込んでいくスタイルだ。
別の言い方をすれば、中盤と連携しているサイドを離れて、プレーの視野と、判断と初動の速さ、即興能力……さらにはスピードが加わって中央で力を発揮する。
私が見る限り彼が最も輝いたのはあの時期だった。到達したプレーのレベルは並外れていて、彼を上回るのはメッシとクリスティアーノ・ロナウドだけだった。アザールやポグバ、グリーズマンですらあのレベルのプレーは見たことがない。当時のネイマールは、フィジカルもメンタルも完ぺきだった」
「ネイマールは重要だが代替不能な存在でもない」
――ネイマールのいるブラジルといないブラジルがありますか?
「ネイマールは重要だが代替不能な存在でもない。私は勝利や敗北を個人の力に帰す考え方にはずっと反対している。
メッセージとして伝えたいのは逆で、チームとしてプレーし行動するコレクティブな理念だ。個が力を発揮するのはコレクティブな力を得てからで、そのときはじめてネイマールやコウチーニョ、リシャルリソンらが自らを表現して違いを作り出す」
――ネイマールと他の選手の関係、グループ内での彼の行動をどう判断していますか?
「カメラが回っていないときのネイマールは、あなた方が知る彼とは大きく異なる。冗談を言ってはふざけあう大きな子供に戻る。
リシャルリソンやガブリエル・ジェズス、アルトゥール、エデルソンたちとグループを形成していて、ピッチの上でも外でも楽しくやっている。とても陽気なグループで、いい雰囲気で仕事に励んでいる」