フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ブラジル代表監督チッチが大胆告白。
「ネイマールは代替不能な存在でもない」
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byYann Le Duc/L'Equipe
posted2020/06/15 11:45
情熱的でありながら、一方でブラジル代表の指導者として気品ある静けさも身にまとうチッチ代表監督。
「ベルギーは成熟したチームだった」
――ここまであなたのチームは、公式戦を23試合戦い1度しか負けていません。唯一の敗北となったWC準々決勝ベルギー戦(1-2)では、失点はセットプレーとカウンターアタックによるものでした。
「結果や内容にもよるが、ひとつの試合は常にふたつの異なる解釈をなし得る。準々決勝で敗れはしたが、ブラジル対ベルギー戦はロシアWCのなかでもベスト3に入る素晴らしい試合だった。ピッチ上で目にしたテクニックのクオリティといったら信じられないぐらいだった……。かたやデブライネ、かたやネイマール。こちらにコウチーニョがいれば、相手にはアザールがいた。GKではクルトワ対アリソン。ただ、結果だけが、われわれのパフォーマンスを反映していなかった。少なくとも延長に突入すべき試合だった。
ベルギーは成熟したチームだった。感情のコントロールに長けていたし、大きな大会での経験でわれわれを上回っていた。だが、私がこれまで指揮した48試合の代表戦のなかで、この試合が最も多くのシュートを放った試合であると同時に、想像力を発揮した試合でもあった。枠内シュートも9本で2番目に多い試合だった。ただ、それでもなお十分ではなかった。枠にシュートが飛ばず、効率的でなかったのならまだわかるが……」
――そこがあなたの最大の後悔ですか?
「この試合のことを思い出さないときはないし、眠れなくなることもある……」
「予選突破がまずは最優先だ」
――次のカタール大会まであと2年ちょっとになりましたが、別の物語になりますか?
「ブラジルではWCが他の何よりも価値がある。そして2022年は、すでに人々の頭の中にある。
予選突破がまずは最優先だ。私のすべてのエネルギーと集中力も予選に向けられている。コパアメリカもあるが、今回は目的としては二の次だ(インタビューは3月末に予定されていたWC予選兼コパアメリカ2020予選――本大会は6月12日~7月12日にアルゼンチンで開催予定だった――が延期になる前におこなわれた)。突破という目的を達成するまで、一歩ずつ地道に仕事を続けながら進化していきたい」