JリーグPRESSBACK NUMBER
私のJ最強クラブ。ポンテが微笑み、
指揮官ギドが叫んだ'06年浦和の衝撃。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/05/14 20:00
歓喜の瞬間、両手を挙げて喜びを表したギド・ブッフバルト。スタジアムに詰めかけたサポーターへ感謝の言葉を述べた。
2チームできるほどの盤石な補強。
クラブは積極的な補強でサポートした。'04年にDF田中マルクス闘莉王、MF三都主アレサンドロが加入し、オフト体制からのメンバーと合わせて戦力が充実。翌'05年、FWエメルソンの退団、FW田中達也の負傷離脱などアクシデントが続くと、すぐさまMFポンテなどの即戦力を獲得。J1リーグは2位に終わったものの、天皇杯で優勝してシーズンを締めくくる。
迎えた'06年の補強は、さらに強烈だった。フェイエノールト(オランダ)からMF小野伸二が4年半ぶりに復帰し、前年に東京ヴェルディで22得点を挙げたFWワシントンも獲得。他にも前所属クラブのレギュラーや日本代表経験者を加えた顔ぶれは、『チームを2つ作ることができる』と評されるほどだった。
階段を上るように各タイトルを獲得し、さらに戦力を上積みした。ブッフバルト監督は開幕前のファン感謝デーで、「モクヒョウハ、ユウショウデス」と日本語で高らかに宣言。リーグ初制覇へ、機は熟していた。
堅守速攻に加わったワシントン。
ブッフバルト監督は就任以来、堅守速攻を基本戦術としてきた。前線ではエメルソンや田中達、FW永井雄一郎などのスピードスターが活躍してきたが、この年はワシントンが持ち味を遺憾なく発揮。189cm、88kgの巨漢ながら走力も兼ね備えており、カウンターのターゲットになるとともに、ゴール前では俊敏な動きからネットを揺らして、浦和の新しい得点源となった。
2列目ではポンテが躍動した。切れ味鋭いドリブルとパスを武器に、チャンスを供給し、自ら得点を挙げ、ハードワークもこなす。ブラジル人だが、「ドイツでプレーしていたとき、彼女と舌を絡ませながら覚えたんだよ」とニヤリと笑って教えてくれたドイツ語も堪能で、ワシントンともブッフバルト監督とも通訳を介さずにコミュニケーションを取り、チームの中心となった。