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横浜フリューゲルス、最後の2カ月。
楢崎正剛「優勝より寂しさの方が」
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph byShinichi Yamada/AFLO SPORT
posted2020/05/02 08:00
天皇杯で有終の美を飾った横浜フリューゲルス。喜びと切なさが交錯する中、若き日の遠藤保仁、三浦淳宏らの姿も懐かしい。
楢崎や前田が吐露した心の内。
“最後のホイッスル”を聞いた楢崎はピッチで大の字になった。そして、この2カ月間の心中を明かした。
「サポーターの応援がどんどん大きくなってきて、それに返すには僕らはサッカーしかないから。サッカーでしか表現できないから。だから表そうと。まだ終わりじゃないと思いながら。優勝の嬉しさと消滅の寂しさ? 寂しさの方が大きいかな。これから徐々に大きくなっていく気がします」
表彰式で「フェアなことをしてください」と思いをぶつけた選手会長の前田は、記者に囲まれてからも「フェアなアピールができたと思う」と繰り返し口にして、やっぱり胸を張った。
義憤に駆られた日々だった。前田自身、怒りを露わにしたこともあった。それでも自らを失うことはなかった。何より彼らはただの一度も負けなかった。Jリーグ4試合と天皇杯5試合、すべて勝って9連勝。日本一の頂に立ち、胸を張って堂々とエンドマークを打った。
国立に掲げられた巨大な横断幕。
それはサポーターたちも同じだった。怒りとやるせなさに身を震わせながらも、決して暴力に流れることはなかった。だから、あれほどの共感を得た。
そればかりか存続が叶わなくなってからも彼らは諦めなかった。会社を設立し、再建基金を集め、せめて「フリューゲルス」の名前を譲渡してくれと求め……新クラブ設立へとシフトして活動を続けたのだ。
最後のゲームが始まる前、サポーターたちは巨大な横断幕を掲げた。
この想いは決して終わりじゃない
なぜなら終わらせないと僕らが決めたから
いろんなところへ行って いろんな夢を見ておいで
そして最後に… 君のそばで会おう
最後のゴールの向こうには、そんなサポーターがいて、その向こうには真っ青な空が広がっていた。
いまから21年前、一点の曇りもない清々しいフィナーレだった。