“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
本田圭佑を象徴するプロ初ゴール。
マラドーナに学んだ強烈な自己主張。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/04/28 11:50
プロ初ゴールを決めた4月28日東京ヴェルディ戦。本田圭佑のキャリアを予期させるゴールだった。
チームを勝利に導くために。
入団時の本田は、どちらか言えばゴールよりもパスにこだわりを持っていた。それは入団直後の言葉にも表れている。
「自分はゲームメーカーなので、まず高い戦術眼を身に付けることが重要。これから先、名古屋にとっても自分にとってもそれが凄く重要だと思う。『勝利に導くゲームメイク』っていうのを目標にしていきたい。もちろん開幕スタメンはマストだと思っています。名古屋は俺が必要なチームになりますよ」
本田の最大の武器はパワー、そして繊細なボールコントロールと長短のパスの使い分けができる左足のキックにある。中学、高校時代とその左足を駆使して試合のリズムを作り、ゴールに直結する働きが目立っていた。
強気な物言いのため誤解されることが多いが、彼が一番に考えていることはチームの勝利であり、そのために自分の個性をどう発揮するかにベクトルが向けられていたのだ。
だが、開幕戦でプロ初アシストを記録し、「開幕スタメン」と「勝利に導くゲームメイクをする」という2つの有言実行をすると、早々に次の目標へ切り替えていた。
「もう次はゴール。ゴールしかないですね」
「決められそうな気がするんです」
当時から本田は、1つの有言実行を果たすと、ベクトルは次のステージに向く。達成したことに満足せぬよう、次の明確な目標を外に発することで、自分自身にプレッシャーをかけて奮い立たせている。彼の人生における重要なルーティーンであり、それは今でも変わっていないように感じる。
東京V戦の試合前に、確かにこう話していた。
「俺、次のヴェルディ戦でゴールを決めますよ。本当はもう決めているはずだったんですけど、ちょっと自分でも初ゴールまで時間がかかっているなと思っているんで、もう次決めます!というか、決められそうな気がするんです」
堂々たる有言実行。そんな頼もしい姿を目の当たりにして、「次は何を目標にするか」と問うと、「ワールドユースでも勝利に導くゲームメイクをして活躍することですよ。オランダで世界に衝撃を与えたいです」と言い切った。
しかし、ここで本田は挫折を味わうことになる。