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MotoGP史に今も輝く加藤大治郎。
ロッシをも恐れさせた永遠の天才。 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2020/04/27 18:00

MotoGP史に今も輝く加藤大治郎。ロッシをも恐れさせた永遠の天才。<Number Web> photograph by Satoshi Endo

世界グランプリに参戦して、わずか2年あまりでその頂点に手をかけるまで、一気に駆け上った加藤大治郎。

遅いと言いながらもトップタイムを競う。

 この年、コースの安全性に問題があると指摘された鈴鹿は、最終コーナーにシケインが2つ続くWシケインを設置し、最終コーナーとそれに続くメインストレートのスピードを落とす対策を講じた。

 これが小柄だった大ちゃんには大きなハンディキャップとなった。

 当然ながら250ccに比べて重くて大きいMotoGPマシン。連続の切り返しが要求されるWシケインで大きくタイムを失う。ここだけで「0.5秒から6秒遅い」と語っていた大ちゃんだが、フリー走行ではいきなりトップタイムを争うほどのスピードを見せた。Wシケインがなければ、圧倒的な速さでトップタイムをマークしていたことは間違いなかった。

 だが肝心の予選は、時々雨が降る不安定な天候に。大ちゃんは本来の速さを発揮できず、11番手までポジションを落としてしまった。

「世界が参戦を待ち望む」稀有なライダー。

 250cc時代にワイルドカードで出場した鈴鹿の日本GPで2年連続優勝。その速さは「世界に行きたいと望む選手」ではなく、「世界が参戦を待ち望む」特異な選手だった加藤大治郎。鈴鹿はブラインドコーナーの多いテクニカルコースで、世界的にも難しいサーキットのひとつだが、フル参戦するようになってからも大ちゃんは連勝していた。250ccで通算4勝、鈴鹿8時間耐久レースで2勝を挙げた大ちゃんに、'03年の日本GPで誰もがMotoGP初優勝を期待した。

 しかし、唯一のウイークポイントは、ウエットコンディションがあまり得意ではない、ということだった。

 天候に恵まれなかった予選で11番手に終わったことが、ドライコンディションで行われた決勝を厳しいものにしていた。

 1周目7番手。2周目も混戦の中で6番手と、前を走るライダーが邪魔になってなかなか思うようにポジションを上げられなかった大ちゃん。一方、トップグループにいるロッシはリードをどんどん広げていく。それが大ちゃんのさらなるペースアップにつながったのだろうか――3周目の130Rから最終コーナーにかけてのブレーキングでバランスを崩し激しく転倒する。

 その転倒でコースサイドのクラッシュパッドに激突。

 頭を強く打ち、帰らぬ人になった。

【次ページ】 「大治郎は頑張っています」

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