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革命前チェルシーの光だったゾラ。
“魔法使い”が残した素敵な宝物。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2020/04/14 11:50

革命前チェルシーの光だったゾラ。“魔法使い”が残した素敵な宝物。<Number Web> photograph by Getty Images

アズーリでR・バッジョの陰に隠れる形となったゾラだが、チェルシーでは誰よりも愛されるアイドルだった。

36歳ゾラ、チェルシー最後の20分間。

 勝利チームのファンにとっても、ほろ苦いドラマが展開された。

 ジャンフランコ・ゾラ、最後の20分間だ。

 72分にベンチを出たイタリア生まれの「小さな巨人」は、翌シーズンからの「ロシア革命」を待つことなくチェルシーを去ることになる。この「ブルーズの25番」こそが、シェッド・アッパー(南側ゴール裏スタンド2階)からスタンフォード・ブリッジでの最後の艶姿も見届けた筆者にとっての「1番」だ。

 見納めになるかもしれないという気はしていた。

 ゾラは、当時すでに36歳。FWとしては大ベテランの部類だ。それでも在籍7年目にして、チェルシーで自己最多の16得点を記録し、チーム得点王争いでジミー・フロイド・ハッセルバインクをリードするシーズンを過ごしていた。

 しかし就任3年目のクラウディオ・ラニエリは、優勝候補ではなかった中で給与コスト削減を兼ねたチームの若返りの使命も託されていた。開幕6試合で5得点の好スタートがなければ――12歳年下のエイドゥル・グジョンセンを先発起用するのは、計12試合では済まなかっただろう。

 人員整理の対象となるキャリア終盤の外国人選手。その1人だったゾラは、契約満了まで秒読みの状態だったのである。

観戦プログラムの表紙と最終ページ。

 当日の観戦プログラムは、ゾラが表紙を飾っていた。頭上で手を叩いて、笑顔で観衆の声援に応えている写真だ。前節で活躍が目立ったわけではなかったにもかかわらずの“表紙起用”は、「お別れ」を匂わせた。

 ただ同時に「ひょっとしたら」と思わずにもいられなかった。淡い期待を抱かせたのは最終ページの写真。翌シーズン向けVIP観戦パッケージの広告に、ゴールを決めるゾラの姿があったのだ。

 それは前月に開催されたエバートン戦でのゴールだった。頭越しに届いたボールを、ワンバウンド後に右足アウトサイドでのループシュートで相手ゴールに放り込んだ。しかし、その美弾は結果的にチェルシーでのラストゴールとなった。

【次ページ】 通算80得点、うち14本は直接FK。

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