スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
19歳メッシが神となったクラシコ。
衝撃ハットトリック、目撃の記憶。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2020/04/12 11:50
先代のバルサ10番ロナウジーニョとエトーが称える。それほどまでにメッシのクラシコでのハットトリックはすさまじかった。
穴だらけの守備、攻め勝つのみ。
GKはカシージャス。カンナバーロとロベルト・カルロスを欠く最終ラインはサルガド、エルゲラ、セルヒオ・ラモス、ミゲル・トーレスの4バック。
ベッカム、レジェスが不在の中盤はマアマドゥ・ディアラとガゴがボランチに並び、エメルソンを外してグティを左MFに起用した。右のラウールは守備時は中盤に加わり、攻撃時は前線のイグアイン、ファン・ニステルローイと3トップ気味に並んだ。
いずれも穴だらけの守備組織には目をつぶり、攻め勝つことに重点を置いた布陣である。これで試合が面白くならないわけがなかった。
良くも悪くも個のタレントが際立ち、守備側がその代償を払うことになった前半は、4つのゴールと6枚のイエローカードが飛び交う大荒れの展開に終始した。
主役となったのはマドリーの2ゴールを生み出したグティとファン・ニステルローイ、バルサの2ゴールを決めたメッシと、PK献上&退場で戦犯となったオレゲールであった。
イニエスタが右SBに移る謎采配も。
後半は中盤で最も動きの良かったイニエスタを右サイドバックに移すライカールトの不可解な采配もあり、10人のバルサがいつとどめを刺されてもおかしくない状況に追い込まれる。
72分にグティのFKからセルヒオ・ラモスにバックヘッドで決められた時点で勝負あったかに思われたが、衝撃の結末が待っていた。
92分。敵陣左サイドのロナウジーニョがサルガドのマークをブロックしつつ、のろのろと中央へボールを運びながらペナルティーエリア手前のスペースにパスを通す。
そこに走り込んだメッシはファーストタッチで左前方にボールを運び、2タッチ目で飛び込んだエルゲラをかわしてエリア内左に侵入。直後に左足を振り抜くと、鋭いシュートがカシージャスの手先をかすめ、ゴール右に突き刺さった。