スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
19歳メッシが神となったクラシコ。
衝撃ハットトリック、目撃の記憶。
posted2020/04/12 11:50
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
『Sports Graphic Number』は創刊1000号を迎えました。それを記念してNumberWebでも執筆ライター陣に「私にとっての1番」を挙げてもらう企画を掲載します! 今回はスペインサッカーを中心に取材する工藤拓氏。同氏が挙げたのは19歳のリオネル・メッシが神となった「クラシコ」について――。
外出禁止令のおかげで時間を持て余し、家で断捨離をしていたら懐かしいものが出てきた。引き出しの奥に10数年も眠っていた、昔の観戦チケットである。
そのほとんどはバルセロナに移住して間もない2006-07年のもので、プリントされた文字がほとんど消えてしまっているものもある。
あの試合は無事だろうか。ふと思い出し、探し当てたその1枚は、幸いまだはっきりと読み取ることができた。
JORNADA:26 TEMPORADA:06/07
FC BARCELONA-REAL MADRID CF
2006/07シーズンのリーガ・エスパニョーラ第26節。2007年3月10日に行われたバルサホームのエル・クラシコは、激しい打ち合いの末に3-3のドローで幕を閉じた。
今も語り継がれる伝説のクラシコ。
初めてカンプノウで観戦したこのクラシコは、当時19歳のメッシが初めてハットトリックを記録した一戦として、今も語り継がれている。
あの日の夜、カンプノウのスタンドは9万8000人弱のファンで埋め尽くされた。文字通りの超満員だ。馴染みのイムノが流れはじめると、そのスタンドが青、赤、黄色のモザイクで彩られた。
両ゴール裏には「BARCA!」の文字。メインスタンドにはカタルーニャ州旗と同じ赤と黄色の縦縞、バックスタンドには巨大なバルサのエムブレムが浮かび上がる。自分はその右上、青とえんじ色の背景の一部を担っていた。
22時。ウンディアノ・マジェンコ主審のホイッスルと共に、バルサのキックオフで試合が始まった。