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協会もレアルも「困ったらイエロ」。
“銀河系”を支えた名DFの献身と情熱。
posted2020/04/13 11:30
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Firto Foto/Getty Images
スペイン史上最高のDFは誰か――。
マドリード辺りの酒場で議論尽くされたであろうこの疑問は、世代により議論は多少分かれるだろうが、選択肢はそう多くないのかもしれない。現役ならセルヒオ・ラモスやジェラール・ピケ。少し前であれば、カルレス・プジョルだろうか。
だが、90年代に遡ればフェルナンド・イエロの名前を挙げることに対する反意は限定されるはずだ。
なぜ、イエロをスペイン歴代最高のDFに推すのか。それは類稀なる得点能力と展開力に起因する。レアル・マドリード、スペイン代表でも主将を務めたイエロは、CBが主戦場ながら多くの得点を重ねてきた。レアルでは102得点。代表では29得点を挙げ、この記録は現在も歴代5位であり色褪せていない。攻撃の起点としてCBの仕事がより複雑となった現代サッカーでも、イエロならどんなチームでもすんなり適応する絵が目に浮かぶ。
銀河系軍団の中で、必死に体を張り……。
彼のベストシーズンはいつかと問われれば、1997-98シーズンだろうか。肉体的にもピークで、熟練の粋に達した読みでDFラインの統率者としてクラブをCL制覇に導いている。
だが、筆者にとって印象深いのは、レアル在籍最終年となる2002-03シーズンだ。
当時のレアルは、ジダン、ロナウド、ラウル、フィーゴ、ロベルト・カルロス等が揃い、まさに銀河系と呼ぶにふさわしいスター集団だった。一方で、その攻撃偏重のメンバー構成ゆえにチームバランスは崩壊していた。そんな中でもボランチのマケレレと共に最終ラインのイエロが必死に体を張り、ギリギリのところで守備陣を繋ぎ止めていたのだ。既に年齢は35歳を数えており肉体的なピークは過ぎていたが、スピードの衰えは経験でカバーした。