スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
19歳メッシが神となったクラシコ。
衝撃ハットトリック、目撃の記憶。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2020/04/12 11:50
先代のバルサ10番ロナウジーニョとエトーが称える。それほどまでにメッシのクラシコでのハットトリックはすさまじかった。
バルサ、マドリーともに散々な状況。
ライカールト体制4年目を迎えた当時のバルサは、リーガとCLの2冠を獲得した前シーズンとは正反対の、散々な1年を過ごしていた。
セビージャとのUEFAスーパーカップは0-3で完敗を喫し、クラブW杯ではインテルナシオナルに初タイトルを阻まれた。4日前にはCLのベスト16でリバプールに屈し、連覇の望みを絶たれたばかりだった。
残るタイトルは準決勝に勝ち残っていたコパデルレイと、前節セビージャとの直接対決に敗れて首位の座を失ったリーガのみ。そんなタイミングで迎えたホームのクラシコは、言うまでもなく負けられない一戦だった。
一方、ファビオ・カペッロ率いるレアル・マドリーも追い詰められていた。
リーガは前節まで3戦連続で勝利を逃し、4位に転落。3日前にはバルサに続いてバイエルン・ミュンヘンに敗れ、3季連続でCLの8強入りを逃した。勝っている時でさえ「守備的すぎる」と叩かれていたカペッロに対する批判は凄まじく、いつ解任されてもおかしくない状況が続いていた。
急造3-4-3と、4人アタッカー体制。
このような状況下、両指揮官は極めて攻撃的な姿勢を打ち出す。
ライカールトは大方の予想を裏切り、急造の3-4-3を採用した。GKはビクトル・バルデス。サイドバックは起用せず、プジョル、テュラム、オレゲールが3バック、マルケス、イニエスタ、シャビ、デコがダイヤ型中盤を形成し、前線にはロナウジーニョ、エトー、メッシが並んだ。
カペッロも批判の対象となっていた守備的な3ボランチを捨て、4人のアタッカーを同時起用する賭けに出た。