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ビニシウスとマリアーノ。期待度が
正反対の2人でレアルがクラシコ勝利。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGonzalo Arroyo Moreno/Getty Images
posted2020/03/02 11:40
先制点を挙げたビニシウス。この日堅守を見せたジェラール・ピケやテア・シュテーゲンを打ち破る値千金の一撃だった。
戦力外扱いだったマリアーノ。
そしてマリアーノ。
昨夏の移籍市場が閉まった直後の9月、イタリアの移籍専門サイトで「マドリーはマリアーノを来年1月に売却するだろう」とまで書かれた。
実際、2019-20シーズンのマドリーでは戦力外扱い。ケガでの離脱期間があったとはいえ、この日が今季リーガ初出場である。そんなマリアーノがベンゼマと代わってすぐに右サイドを抜け出し、テア・シュテゲンの牙城を崩す。
まずは結果というよりも出場機会、という立場のマリアーノが試合を締める――。ドラマチックな終幕に、7万人超が詰めかけたサンティアゴ・ベルナベウが沸くのは当然だろう。
ジダン監督の手腕もさすがだ。
前回カンプノウのクラシコと同じく、前線はマンツーマン気味にしてバルサのビルドアップを制限しにいった。前半終盤はバルサにボールを握られる時間帯が続いたが、後半は明らかにマドリー優勢になった。
「マルカ」紙を見るとジダン監督は「攻撃と守備両方で勝利に値した。前半の序盤こそうまくハマっていたが、完璧なプレスをかけきることはできなかった。だが後半にはさらにプレスをかけた」と語ったという。
カットインからのドリブルシュートは打てず。
一方で、バルサはこの日もメッシに頼りきりだった。
ここ数戦と同じく中盤に降りてのゲームメークが増えたことで、背番号10が肝心のゴール前で仕事する場面は数えるほど。決定機と言えば前半37分、ブスケッツからのスルーパス、後半29分にマルセロにブロックされたプレーぐらいだった。
両方ともここ最近メッシが見せている“裏抜け”からのチャンス創出だったが、必殺のカットインからのドリブルシュートは1本も放てなかった。
キケ・セティエン監督も結局は組み立てでメッシ頼みになり、メッシ本来の良さを減じた。プレーエリアのヒートマップを見れば、センターライン付近が真っ赤で、ペナルティエリアに近づけば近づくほど緑。統計はウソをつかない。