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ビニシウスとマリアーノ。期待度が
正反対の2人でレアルがクラシコ勝利。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGonzalo Arroyo Moreno/Getty Images
posted2020/03/02 11:40
先制点を挙げたビニシウス。この日堅守を見せたジェラール・ピケやテア・シュテーゲンを打ち破る値千金の一撃だった。
ジダン監督のマンマネジメントあってこそ。
さらには得点の予感を少し漂わせたグリーズマンも後半途中でピッチを去った。セティエン監督はアンス・ファティのフレッシュさに懸けたのだろうが、1点ビハインドの場面で救世主となる役割を17歳に託したのは、やはり荷が重かった。
それとは対照的に、ジダン監督は起用した選手の能力をほぼ生かしきった。確かにクロースのミドルシュートはいつもほどの精度ではなかったが、ビニシウスの先制点の契機になったパスを送ったのはクロースである。
またここ最近批判されがちだったマルセロも、メッシの突進を止めた決死のカバーリングとガッツポーズを見れば、この一戦にどれだけモチベーションを持って臨んでいたかが分かるし、ジダン監督のマンマネジメントあってこそだろう。
「我々(バルサ)より彼らにとって重要な一戦だろう。もし我々が勝ったら、勝ち点5差となるからね」
セティエン監督は試合前の記者会見でこんな言葉を口にしたという。こう発言することでマドリー側にプレッシャーをかけようとの駆け引きがあったのだろう。
しかしマドリーには“上手いヤツらが根性を出し切る”風土がある。だからCLでの3連覇をはじめ、一戦必勝の大一番に結果を残す印象が強い。クラシコ初采配となったセティエン監督にとって、彼らの火事場の馬鹿力を読み切れなかったのかもしれない。
マドリーとバルサの勝ち点差は現状で「1」である。しかしラ・リーガでは勝ち点が並んだ場合、直接対決が順位を分ける(今季はマドリーの1勝1分け)。
その点で優位に立ったことはもちろんだが、「絶対に勝利が欲しい一戦」で、チーム全体で結果を残した――CLを含めたビッグマッチ続きの終盤戦に向けて、間違いなくマドリーの方が自信を手にした90分間ではなかったか。