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ビニシウスとマリアーノ。期待度が
正反対の2人でレアルがクラシコ勝利。
posted2020/03/02 11:40
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Gonzalo Arroyo Moreno/Getty Images
期待され続けた男と、何も期待されていなかった男――。
通算244度目のクラシコ、マドリディスタに2度の歓喜をもたらしたのは対照的なシーズンを送っている2人だった。
首位バルセロナとの勝ち点差2で迎えたエル・クラシコ、レアル・マドリーは後半26分にビニシウス・ジュニオールが先制点を挙げる。アディショナルタイムには直前にベンゼマと代わったマリアーノが試合を決定づける追加点を奪って2-0で勝利。
試合前に勝ち点2差だった順位は入れ替わり、マドリーが首位の座を奪い返した。
マドリーとしてみれば、大きすぎる1勝である。
何しろラ・リーガ前節でレバンテ相手に取りこぼし(0-1)、CLマンチェスター・シティ戦ファーストレグ、ホームで痛恨の逆転負け(1-2)を喫しており、もし公式戦3連敗となればジダン監督と選手たちが猛烈な批判に晒されるのは明白だったからだ。
それを救ったのが“期待され続けた男”ビニシウスと“何も期待されていなかった男”マリアーノだった。
メッシを上回るクラシコ最年少ゴール。
まずはビニシウス。
エデン・アザールの度重なる負傷離脱(そして今季絶望)によって、ビニシウスの出番が増えていた。10代にして今季クラシコ前までに公式戦26試合出場は立派な数字だ。加入1年目となった昨季に比べてメディアを賑わす話題はパリ・サンジェルマンへの移籍の噂(本人は否定)が目立っていた。
しかしこの日のクラシコでは誰よりも積極的だった。
前半のマドリーが攻撃の形をほぼ左から作っていたのは、ビニシウスの突破があったからこそ。バルサの右SBネウソン・セメドとのマッチアップは一番の見どころだったと言える。その果敢さは後半に入ってもなお継続。先制点はジェラール・ピケの足に当たりコースが変わってゴールに吸い込まれる形だったが、自ら運を引き寄せたと言えるだろう。
結果さえ出れば、の立場だったビニシウス。それがメッシを上回る19歳223日でのクラシコ最年少ゴールという最高の答えを出した。