セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
実録・無法ウルトラスに潜入(3)
ローマの街中で浴びた火炎瓶攻撃。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakashi Yuge
posted2020/01/07 11:00
スタジアム内で燃え盛る炎。セリエAのウルトラスの周辺には、何か危険な匂いが付きまとう。
ローマダービーでの異常な圧力。
この世界では何かが狂っている。
2週間後の葬儀では極右グループと密接な関係がある2000人のウルトラス連合が発煙筒とファシズム式敬礼で死者を送り、ボスの娘とともに警官隊を「糞ども!」と罵った。
9月1日のローマ・ダービーで、クルバ・ノルドはラツィオと選手たちにまで牙を向けた。「ボスを弔う声明を出さなかった」という理由でクラブと選手たちを非難し、試合後に選手がゴール前へ来て感謝を述べる挨拶を拒否したのだ。いちゃもんをつけて要求を通そうとする彼らは、圧力団体以外の何者でもない。
試合自体は見応えのあるシュートの応酬の末に1-1の引分けに終わったが、ラツィオとローマのウルトラスたちは互いに呪詛の言葉を吐きながら、日常へ戻っていった。
ダービーは同じ共同体のなかで、日々澱のように溜め込まれた嫉妬や怒り、負の感情が一気に噴き出す場だから、清々しい試合などありえないのだ。
レッジーナが絶対に負けられない敵とは?
2004年当時、レッジーナにも絶対に負けられない相手が3つあった。
同じカラブリア州のクラブとして張り合うカタンツァーロとクロトーネは、当時下位のカテゴリーにいたし、少々距離があったから無視しても構わない。
だが、海峡を挟んで3kmの対岸にあるメッシーナは別だった。2004年夏にメッシーナがセリエAへ昇格して以来、「海峡ダービー」は“決戦”になった。
どのくらいの仇敵なのか。そう尋ねると、決まって同じ言葉が返ってきた。
「俺たちレッジョの男は、毎朝窓を開けて対岸を見るたびに念じるんだ。“メッシーナなどこの世から消えてなくなれ!”ってな」
セリエAでの決戦が近づくにつれ、町には不穏な空気が流れ始めた。
(8日配信の第4回に続く)