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南野拓実がザルツブルクで得た宝。
「俺めっちゃサッカー好きやで!」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2019/12/21 11:50
リバプール相手にボレーシュートを叩き込んだ南野拓実。今度はきっと聖地アンフィールドに熱狂をもたらすはずだ。
「俺、楽しんでる。サッカー好きや!」
無心でプレーする境地に辿り着けたあの日。最初から何も考えないでプレーしていたら、そこまでは辿り着けなかっただろう。悩みに悩んだ。考えに考えた。工夫を凝らして向き合おうとした。そんな挑戦の日々があったからこそ、開けた世界だった。
「こう見えて結構いろいろ考える方なんで(笑)。いろいろ試したんです、自分のなかで。考えてやるプレーを。でも監督も代わって、チームにいろんな言葉しゃべるやつがいて。負けた次の日とかでも何も考えてないように陽気に練習に来る仲間もいて。
そんななかでやってるんだったら、考え込んでやるよりも『俺、楽しんでる! 俺、めっちゃサッカー好きやで!』っていうのを周りにアピールするというか、アグレッシブな部分をどんどん出していこうと思ったんです」
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世界中から才能の卵たちが集まるザルツブルクのポジション争いは、いつだって厳しい。リーグを戦うことよりも、練習でどれだけアピールできるかの方が難しかったりする。
仲間としのぎを削って手応えを感じたり、失望と向き合ったりする毎日。出場時間が終盤の数分間だったことだってある。それでもピッチに立ったら絶対に手を抜かない。たとえ数秒であっても全力でプレーする。
そのなかで自分らしさを作り上げてきた。そして、結果を残してきた。
次に続く選手に大きな指針となる。
常に次のステップを狙ってきた。「そろそろオーストリアを出た方がいいのでは?」という声があることも、十分わかっていた。
「毎試合毎試合、そういう意識でやってます。ヨーロッパにいるぶんそういうチャンスは広がっていると思うし。いつかここを出るってことは、常に意識しています」
とはいえ、移籍にはタイミングと巡り合わせが欠かせない。どこでもいいわけではない。いつでもいいわけではない。慌てて飛び出して試合にも出られず、チームの成績も伴わず消えていく選手は無数にいる。
ザルツブルク以上の環境が、すぐに見つかるわけでもない。今回の移籍はオーストリア経由(世界の)トップチームという可能性を示したのと同時に、しっかりしたコンセプトを持ったクラブでじっくりと自分を育て上げる時間の大切さを改めて教えてくれたと思う。
次に続く選手に、これ以上ない指針をもたらしてくれた。