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八村塁の活躍を陰で支える凄腕代理人。
謎のベールを破って……独占レポート!
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYukihito Taguchi
posted2019/12/15 08:00
滅多に撮影に応じることのない“ザ・エージェント(代理人)”のスナップショット。八村塁とダレン・マツバラの関係は極めて良好だ。
「(八村は)あの年齢にしては、とても特別」
彼らが大事にしていることが、もうひとつある。
常にチームで仕事を成し遂げるということ。
代理人の中には、複数の担当者がいてもトップの1人の名前しか表に出さないチームも多いが、レイニーとマツバラはどちらが上でも下でもなく、狭い役割に収まることもなく、常にチームとして、その時に必要な仕事を柔軟に協力し合って行う。
「代理人の中には、他の代理人といっしょに働くことがうまくできない人たちもいる。でも、これはチームワークだ。私たちはどちらもバスケットボール選手としてプレーした経験があるから、チームワークをよく理解している」とマツバラ。
「そう、ボールをパスするようなものだ。お互いにパスを出し合い、得点するんだ」とレイニーも同意する。
その“チーム”の中に八村もいる。常にグループチャットでリアルタイムに情報を共有し、共同作業で物事を決めていくのだという。
「とにかく常に(グループチャットで)話をしている。毎日、1日中。これは独自のやり方だし、そういうやり方でできることに満足している」とレイニーは語る。
多くの選手たちを見てきた2人だが、八村はそんな中でも21歳という若い年齢の割に、人間として成熟したところがあるという。何が好きで、何が好きでないかといった価値観をすでに持っていて、自分らしさをわかっている。
「あの年齢でそういう成熟したところがあるのは、とても珍しい。自分が何を好きで、何が好きではないかをわかっている。と同時に、自分が知らないことが何なのかもわかっている。知らないことをきちんと認め、学ぼうとする。あの年齢にしては、とても特別なことだと思う」とレイニーは称賛する。
大事なのは「情報を外に漏らさないこと」。
代理人が選手のために行う仕事は大きく2種類に分類できる。
ひとつは、本職であるバスケットボールのチームとの契約関係。
もっともNBAの場合は、ドラフト指名されたルーキー選手の最初の契約は労使協定で金額や年数がほぼ決まっているため、この段階で一番重要なのは、どれだけ選手にあったチームに入り、才能をどれだけ発揮することができるか、だ。さらに言うと、厳密には行き先もドラフト指名によって決められるため、自分たちでコントロールできる要素はそれほど多くない。
それでも、レイニーとマツバラは、八村のために彼らなりの戦術をたて、ドラフト対策を講じた。その戦術にとって一番大事なのは「情報を外に漏らさないこと」。その対策の詳しい話こそ語ってもらえなかったが、どのチームが八村に興味を示しているかの情報収集からはじまり、ドラフト前にどのチームのワークアウトに行くのかなど、綿密に練られた計画が遂行されたという。