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高校で県大会2回戦止まりが怪物に。
小酒部泰暉が神大バスケ部で覚醒。
posted2019/12/09 11:40
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph by
Miho Aoki
最高成績、県大会2回戦。都道府県選抜の経験、ゼロ。
そんなキャリアの選手が今、大学バスケットボール界・最強の怪物として注目を集めていることをご存知だろうか。
神奈川大学3年、小酒部泰暉(おさかべ・たいき)。身長189センチのスモールフォワードだ。
野球界では、ドラフト会議が近付くと、毎年のように超無名の「隠し玉選手」が話題となる。しかし、野球と比べて競技者数が少ないバスケットボールにおいて、それはめったに表れるものではない。
たとえ自チームで結果を残せなかったとしても、都道府県選抜チームの選考レベルには引っかかるのが通例だ。しかし、小酒部の選抜経験は小田原地区選抜止まり。上位レベルの選考には箸にも棒にも引っかからなかった。
2位を150点以上引き離して得点王。
今の彼を知っていて、その事実をすんなりと受け入れられる人は少ないだろう。
11月初旬に閉幕した関東大学1部リーグでは、2位を150点以上引き離して得点王を獲得。バレーボール日本代表選手に匹敵する最高到達点345センチの跳躍力と、長い腕を活かしたジャンプシュートは、ブロックに飛んだ相手が思わず笑ってしまうほど高い打点から放たれる。
今夏は学生選抜として日韓戦を戦い、3試合を通してトップスコアラーとして活躍し、数本のダンクまで決めて見せた。けがのため辞退となったが、B代表候補にも選出されている。
リーグ戦の会場では、FIBA公認のエージェントを複数見かけた。めったに大学の試合など見に来ない彼らに声をかけると、口をそろえて「小酒部を見に来た」と言った。
Bリーグの複数クラブが彼の獲得に動いているという情報もあるし、Bリーグの大河正明チェアマンが公の場で「小酒部くんのような選手にBリーグにチャレンジしてもらいたい」とコメントしたこともあった。
その注目度と将来性の高さは、ここ数年の大学界では異常とも言えるレベルに達している。
関東1部リーグは、中高時代から輝かしい実績を残した選手が集まるエリートカテゴリーである。「ド」がつくほど無名だった小酒部が、エリートたちをぶっこ抜いてトッププレーヤーにまで上り詰めるまでの過程が知りたくなり、神奈川大を訪ねた。