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八村塁の活躍を陰で支える凄腕代理人。
謎のベールを破って……独占レポート!
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYukihito Taguchi
posted2019/12/15 08:00
滅多に撮影に応じることのない“ザ・エージェント(代理人)”のスナップショット。八村塁とダレン・マツバラの関係は極めて良好だ。
ブランド戦略で一流代理人が重要視するものとは?
来年夏には東京オリンピックという、八村にとっても、日本のスポーツ界にとっても大きなイベントがあるが、オリンピックに向けてだけのスポンサーではなく、オリンピック後も継続できるような関係を求めていた。
そのためにも、企業側が八村自身をどれだけ理解し、彼の伝えようとしていることを大事にしてくれるかということも重要な要素だった。
市場での見せ方も、楽しく物語を語るような方法か、あるいは力強く、まわりに刺激を与えるようなメッセージ性があることを特に求めた。それは、各ブランドのコピーからもうかがえる。
「信じられないことは、信じることから生まれる」(三井住友銀行)
「世界は変わる。準備はいいか?」(ソフトバンク)
「UNITE Family Flies Together」(ジョーダン・ブランド)
レイニーは「ルイは多くのブランドにとって夢のような存在だ」と言う。すべてをよく見て学び、自分の感情をきちんと伝えられる。撮影現場でも謙虚で、まわりの人に敬意をもって接し、説明されたことはすぐに理解し、笑顔でハードワークをこなすからだ。
もちろん、八村自身がどれだけ難なく撮影などの作業をこなしたからといって、彼の時間は限りがある。そして何よりも、彼にとって一番大事な仕事はプロのバスケットボール選手であることだ。そのため、シーズン中のスポンサー関係の仕事は極力減らし、NBA1年目のシーズンに集中できるようにもしている。
「彼は第一にNBA選手なのだからね」とマツバラは強調する。
「優秀な代理人達」+「幸運の持ち主」
ドラフト、サマーリーグ、開幕と順調にNBAシーズンを送っている八村。まわりから見ていると、予想以上にスムーズに見えるが、裏の話を聞くと、スムーズに行くように多くの人が努力し、計画し、遂行されてきたのがわかる。
もっとも、用意周到にするだけでは得られないような好運も、八村は持ち合わせている。たとえば、NBAに入った翌年、選手としても自信と実力をつけ始めてきたときに母国日本でオリンピックが開催されるというタイミング。
「彼があの年に生まれ、(22歳の年に)オリンピックが東京で開催される。それは運だ。偶然で信じられないことだ。彼はそういうタイミングを持っている。これは作り出すことができないことだ」とレイニー。
「そうあるべき星の下にいるんだ。それが“持っている”ということなんだ」とマツバラ。
才能と努力と運命、そして綿密な戦略。八村のNBAのキャリアはそれらすべてに支えられている。