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シブコは最後までよく笑っていた。
激動のプロ1年目、来季の課題は? 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byYoshihiro Koike

posted2019/12/03 20:00

シブコは最後までよく笑っていた。激動のプロ1年目、来季の課題は?<Number Web> photograph by Yoshihiro Koike

賞金女王に輝いた鈴木愛を祝福する渋野日向子。最後の会見までシブコ節が炸裂していた。

最高の前半戦、転がり込んだメジャー。

 第1打。ドライバーでのティーショットは「今日イチだった」という会心の当たりでフェアウェーを捉えた。

 5月には国内メジャーのワールドレディス・サロンパスカップでツアー初優勝を飾った。初優勝後には一時的な落ち込みを経験したが、7月には資生堂アネッサ・レディスですぐさま2勝目。ルーキーとは思えない最高のシーズン前半戦を過ごした。

 第2打。残り172ヤードを5番アイアンで狙い、ピン手前2.5mのバーディーチャンスにつけた。打った瞬間、渋野は普段と違う感じで笑っていた。

「はい、ダフりました(笑)。ダフって乗せるところとか、本当に私を象徴しているなと思う球だった」

 前半戦の活躍で全英女子オープンの出場権が転がり込み、初めての海外ツアーがメジャーの舞台となった。そこで思いがけず、42年ぶりの日本人メジャー優勝を成し遂げてしまった。しびれる場面で駄菓子を頬張る豪気な姿も話題になり、まるで魔法にかけられたように周りの世界が一夜にして変わった。

総決算に相応しいバーティーパット。

 第3打。バーディーパット。グリーンの周りには幾重にも人垣ができ、渋野の一挙一動を凝視していた。打ち出したボールがわずかに右に切れながらすっとカップに消えた瞬間、体を起こして今度はホッとしたように笑った。

「今日のどのパットよりも気持ちが入った。入った瞬間は安堵というか、笑いしか出なかったですね。本当にいい終わり方をしたな」

 全英後、大フィーバーが巻き起こった。出歩けばサインや写真を求められるようになり、気を遣って車の運転を自重するようにもなった。ゴルファーとしての葛藤もあった。本来はミスが出ればすぐ仏頂面になり、悔しさを隠そうともせず、笑顔だけでなく喜怒哀楽のすべてが強く出るタイプ。それが全英でのにこにこした笑顔で名づけられた『スマイルシンデレラ』のイメージによって、世間のイメージと自分本来のキャラクターにギャップができていた。結果を求めて肩にも力が入った。

「全英ではそんなにめちゃくちゃ笑っているつもりもなく、楽しんでやっていた。でも『スマイルシンデレラ』と名前を付けてもらったことで、ずっと笑っておかないといけないのかなと思いながらやっていた時期もあった」

 そうしたくびきから解き放たれたのが9月のデサントレディース東海クラシック。

「結局は自分の人生だからやりたいようにやればいいなと思った」

 その前週の試合では29ラウンド連続オーバーパーなしの国内記録も途絶えていた。スコアにとらわれず開き直って自然体を取り戻したら、すぐに優勝という結果につながった。

 大勢の注目と期待を浴び、どうにかそれに応えようと奮闘しながら、結果も残して最終戦まで駆け抜けた今シーズン。だからこそ大観衆の前で奪った18番のバーディーは総決算に相応しかった。

【次ページ】 ショートゲームと、心と体のバランス。

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渋野日向子

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