欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ユーベがパス24本を繋いでゴール!?
懐疑論を黙らせたサッリ監督の手腕。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/26 09:00
ロナウドらアタッカー陣は数多くそろっている。彼らがサッリ監督の戦術でどう輝くかがユベントスの焦点だ。
古参ファンから集中する懐疑論。
サッリ監督の就任が決まった6月、イタリアの反応は真っ二つに分かれていた。攻撃的なサッリを支持する声と懐疑論。懐疑論は特に、古参のユベンティーニに集中していた。
「あんなのはユーベの監督には似つかわしくない。もっと良い選択があったはずで、所詮はつなぎだよ」
「試合中もなんか、口にずっとタバコのフィルター当てているし。あれが下品だね」
地元のテレビが、本拠地トリノに住む年配のファンのコメントを拾う。ちなみにサッリはナポリ在籍時、チームバスを取り囲むユベントスのウルトラス相手に中指を立てるというジェスチャーをやり、反感を買ったことがある。
そういうサッリ本人のキャラクターとは別に、ユベントスのファンからは別の拒否反応もあった。攻撃的なサッカーを展開するサッリ監督のサッカーは、守備と規律を重んじ、勝利にこだわるという伝統のチームカラーとそぐわないというのだ。
「3バックはやらない」と断言。
「勝利は重要なものではない。唯一価値あるものだ」
かつてクラブの会長を務めたジャンピエロ・ボニペルティが語った言葉は、このクラブのアイデンティティを表すものとして理解されている。イタリアには「スクデットは守備で勝ちとるもの」という格言があるが、勝利至上主義のもとでそれを貫いてきたのがユベントスというクラブだ。
一方、サッリはナポリ時代「選手が楽しみ、また観客を楽しませる」ことをモットーにチームを育ててきた監督である。そんなスタイルが果たしてユベントスに適合するのか。懐疑論は、就任当時からファンの間で存在していたのである。
そうした声は、夏のプレシーズンマッチから高まっていた。堅守でならしたチームのはずが、次々と失点が嵩む。守備の仕方を変えた。ラインディフェンスとハイプレスを重視し、基本的に引いて耐えるということはあまりしない。細かく人を動かして相手選手のマークを行なうというよりも、あくまでボールの位置に従ってゾーンを組み、高い位置で守るというやり方だ。
アッレグリ前監督は4バックと3バックの使い分けを得意としていたが、サッリは「3バックはやらない」と断言。そしてセットプレーの守備も、ゾーンディフェンスに変更した。当然選手たちが、いきなり違うやり方に対応できるわけはなかった。第2節ホームで行われたナポリ戦では処理したものの3失点。スクデットを争うライバルの一角に勝ったという事実がありながらも、3失点したことが問題視された。