プロ野球亭日乗BACK NUMBER
盟主の座をかけた巨人vs.ホークス。
見所は非情采配“鬼監督”の激突。
posted2019/10/15 20:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
「工藤はいい監督になる」
1年前の昨年11月のことだった。
日米野球の解説で東京ドームを訪れた巨人・原辰徳監督がソフトバンクと広島の日本シリーズを振り返って、ソフトバンク・工藤公康監督のある采配を評価していたのを覚えている。
その場面とは日本一を決めた第6戦、両軍無得点で迎えた4回無死一、二塁だった。この試合までシリーズ5戦に先発して15打数2安打と不振にあえぐベテランの内川聖一内野手が打席に入ると、工藤監督は躊躇なく送りバントのサインを出した。
そのサインを内川が忠実に実行して作った1死二、三塁。打席の西田哲朗内野手の初球ファウルを見て、すぐさまサインを切り替えた。
スクイズだった。
ベンチ主導で得点機を作り出す。
そうして広島先発のクリス・ジョンソン投手から西田が一塁線に転がし、三塁から柳田悠岐外野手が生還して先制点をもぎ取った。
この1点と5回のジュリスベル・グラシアル内野手のソロ本塁打による2点を、先発のリック・バンデンハーク投手から4投手の継投で守り抜いてソフトバンクは頂点に立った。
「先発の両投手の出来を見て、そう簡単には点が取れないと判断したから、ベンチワークで点を取りにいったということだね。内川の送りバントも、彼くらいのベテランだったら右打ちをするとか最低限の仕事は分かっていてそれをやってくれるという期待はある。でもベンチ主導で動かして確実に1死二、三塁という状況を作り出して、最後はスクイズ。見事ですよ」