プロ野球亭日乗BACK NUMBER
盟主の座をかけた巨人vs.ホークス。
見所は非情采配“鬼監督”の激突。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/10/15 20:00
CSファイナルステージ、西武対ソフトバンク第4戦 の7回、犠打を決めた内川を迎える工藤監督。
監督は鬼にならなければならない。
そして原監督はこう言った。
「監督というのはあるときには鬼にならなければならない。そういう局面というのが必ずある。そこで鬼になれる工藤は、いい監督になると思うよ」
それから1年。ペナントレースは2位に甘んじたが短期決戦でこそ、その采配力を発揮できる鬼の工藤がそこにはいた。
西武とのパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦で、工藤監督は今度は内川に代打を送った。
場面は1点を追う8回2死一、三塁。マウンドは西武の4番手・平良海馬投手だった。
ただ去年の送りバントと違うとすれば、内川は決して当たっていなかったわけではない。ファーストステージでは第3戦の決勝本塁打を含む2本塁打を放っている。何よりCS通算51安打、10本塁打の30打点はいずれも最多記録である。要は短期決戦での勝負強さはまだまだ健在なはずだった。
「後悔のないように、思い切って」
だがこの日の3打席の凡退内容が、指揮官の決断スイッチを押した。
「タイミングが合っていないように見えた」
即断即決。代打に長谷川勇也外野手を指名し、その長谷川が平良の真っすぐに詰まりながらも左前に落として同点から逆転への流れを作った。
「後悔のないように、思い切っていかせてもらいました」
試合後の工藤監督だ。
この内川への代打だけではない。今季30本塁打を放ち、何よりムードメーカーとしての働きが大きいベテラン・松田宣浩内野手を不振とみれば、ファーストステージですぐさま先発から外した。逆に同ステージの第3戦で先発を外し、このファイナル初戦でも全く使わなかった中村晃外野手を、今度は第2戦で先発に抜擢。その中村の2ランなど3打点の活躍で連勝して、ファイナルステージ下克上への電車道を一気に突き進んだ。