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巨人に「昭和の戦略」で敗れた阪神。
CS第2戦の要点は1、2番の編成だ。
posted2019/10/10 12:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
昭和の日本シリーズには「第2戦必勝主義」という戦い方があった。
V9時代の巨人やその系譜を受け継ぎ広岡達朗監督や森祇晶監督らで黄金期を築いた西武などが、短期決戦を“7試合の長期戦”と捉え、あえて初戦を捨てて相手チームのデータ収集や自軍選手の見極めに使った。
そのために第1戦にはエース級の投手ではなくベテランでコントロールのいい投手を起用する。そして初戦で得たデータを基に、第2戦ではチーム編成や用兵に修正を加えて、エースを立てて必勝を期す。これが「第2戦必勝主義」の根幹だった。
ただ交流戦が始まり、さらにはほぼ全球団にトラックマンシステムが普及したことで、今の野球では初戦で相手チームのデータを収集する必要がほぼなくなっている。
しかもクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージでは1位チームに1勝のアドバンテージがある。第1戦が実質的には昔の日本シリーズの第2戦と同じ位置付けとなっている訳だ。短期決戦は昭和の時代の“7試合の長期戦”から、「先手必勝」の本当の短期決戦となったと言えるのかもしれない。
昭和の戦略を掲げて逆襲。
それでもセ・リーグのCSファイナルステージの第1戦を落とした阪神・矢野燿大監督は、試合後には強気にこう語った。
「ある程度、俺にとっては必要な負けっていうか……俺はそう思っているんだけど」
「もう1個負けられるわけだから。それをどうするかっていうね。日本シリーズに出るためのものとしてね」
あえて昭和の戦略を掲げて残り試合での逆襲にかけるというわけだ。
この強気の裏には3回以降の戦い方がある。