欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
絶不調ミラン、6戦4敗で16位に沈む。
再建どころか「降格」を恐れる声も。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/05 11:30
かつての栄光を取り戻すどころか、降格圏に近い位置にいるミラン。赤黒の輝きはもう戻らないのか……。
マルディーニはジャンパオロを招聘。
そこで、ボバンならびに「スポーツ戦略および開発責任者」との役職でフロントにいるパオロ・マルディーニは、攻撃サッカーの構築に長ける監督の招聘を決めた。白羽の矢を立てたのは、マルコ・ジャンパオロ監督。ショートパスによる組み立てを重視し、ホームでもアウェーでも最終ラインを高く保って積極的に攻めていくサッカーを信条とする。
エンポリやサンプドリアで好成績も挙げた。しかもモデルとするのは、ゾーンプレスを導入して、イタリアのみならず欧州も席巻した『グランデ・ミラン』を構築したアリゴ・サッキだ。若手の育成にも定評があるため、アーセナルで働いていたイバン・ガジディスCEOの下、若手中心に切り替える経営方針にも合致した。
もっとも、短期間で結果を出すよりはじっくりと指導することに長けた指導者であり、これまでのキャリアでも安定した結果が出るまでには時間を要した。そうして迎えた今季、懸念材料はいきなり結果に表れた。
開幕戦から拙い組み立てを突かれた。
開幕のウディネーゼ戦では、戦術の肝としていたショートパスによる組み立ての拙さを突かれて苦戦を強いられた。
組み立ての場面では、ディフェンスラインがミスを連発して次々とボールを失う。中盤の底のレジスタには、本来攻撃的なポジションを担うハカン・チャルハノールを置いたが、彼もパスミスでチームを乱した。挙げ句の果てに相手CKの際に守備の乱れを突かれ、セリエA初出場だった巨漢ブラジル人DFロドリゴ・ベカンにヘディングシュートをねじ込まれて敗れた。
ジャンパオロ監督はこの反省を受け、第2節のブレシア戦ではアフリカ・ネーションズカップで大会MVPに選出された21歳のアルジェリア代表イスマイル・べンナセルをレジスタに据える。
その結果チームは63%ものボールポゼッションを記録して勝利を飾った。さらに第3戦ベローナ戦ではベテランのルーカス・ビリアを中盤の底に据え、アウェーでありながら66%のボールポゼッションを記録。試合にも勝った。しかし、少しずつチームが形になると思いきや、ミラノダービーを皮切りに悪夢の1週間が始まったのである。