欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
南野拓実2アシストのCLデビュー。
ザルツブルクが得た「最高の夜」。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2019/09/22 11:40
ザルツブルク所属6シーズン目となる南野拓実。自身初のCLは大勝という形で幕を開けた。
「CLを経験するかしないかで格が」
失望を重ねているからといって、思いが褪せることはない。むしろ憧れは大きくなり続けていく。昨季ヨーロッパリーグ・グループリーグのRBライプツィヒ戦後にチャンピオンズリーグへの思いを南野は改めて口にしていた。
「いや、出たいですね。やっぱりチャンピオンズリーグは特別なリーグだと思うし、そこを経験してるかしてないかでサッカー選手としての格が違うと思う」
今季からオーストリア・ブンデスリーガ優勝チームが直接グループリーグに出場できるようになったことで、念願の本戦出場を果たすことができた。だが、ここまでの苦難をクラブとともに体験していて、ザルツブルクがチャンピオンズリーグに出られることの意味を本当にわかっている選手というのはそこまで多くはない。
特にキャプテンのアンドレアス・ウルマー、センターバックのアンドレ・ラマーリョ、そして南野はザルツブルクサッカーのDNAを持つ貴重な選手たちだ。幾多の苦難を乗り越えてきた。
ため込んでいた思いを表現した初陣。
南野は昨季ツルベナ・ズベズダとのプレーオフでCL出場を逃したとき、「これがサッカーなんだと思い知らされました。悔しすぎますけど」と振り返っていた。
サッカーとは時に残酷で、誰にも理解できないことが起こってしまうことがある。どれだけ努力をしても、どれだけ情熱的に立ち向かっても、結果がついてこないことだってある。
だが、事象はいつも表裏一体だ。自分たちをそれでも信じ続け、何度倒れてもまた立ち上がり、様々な人の思いを背負って戦い続ける戦士には、極上の試合が訪れることがある。ヘンクをホームに迎えたチャンピオンズリーグ・デビュー戦はまさにそんなゲームとなった。
南野は「自分たちの狙い通りの試合運びができたと思います。前半、自分たちのチャンスでほぼ仕留めることができたのが、この結果につながった1つの要因だと思います」と振り返っていたが、まさにここまでため込んでいたすべての思いが力となってピッチで表現された前半だった。