酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
山田哲人が走って挑む歴史的偉業。
連続成功の次は100%の盗塁王を!
posted2019/08/27 11:30
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
盗塁の話をするのに恐縮だが、セイバーメトリクスの世界は「盗塁」をあまり評価していない。
セイバーの考え方だと「盗塁死」は、最悪のリザルトとなるからだ。走者はいなくなるし、アウトカウントは1つ増える。塁を狙って失敗するくらいなら走らないほうがいい、という発想である。
20年ほど前のMLBで、チーム盗塁数を見ればセイバーメトリクスの浸透度がわかる。
たとえば2002年だと30球団の盗塁数最小は「マネーボール」でおなじみ、ビリー・ビーンがGMを務めるオークランド・アスレチックス(46盗塁)だった。
ただ最近は、盗塁に関する考え方も少し変わっていて、「失敗しないならいい」ということになりつつある。確実に次の塁を奪えるならOKということだ。特に、長打と選球眼がある好打者で、盗塁もできるなら「鬼に金棒」だ。
トラウト、山田の成功率は8割超。
MLBでの代表格は、大谷翔平の同僚であるエンゼルスのマイク・トラウトだ。MVP2回に輝くなどメジャー最高の打者と言われるが、盗塁王も1回、盗塁成功率は.847(199盗塁36盗塁死)というハイレベルだ。
NPBの「鬼に金棒」の代表格は誰かというと、ヤクルトの山田哲人だ。言わずと知れた史上唯一、3度のトリプルスリーに輝く大選手だが、盗塁成功率はトラウトを上回る.886(163盗塁21盗塁死。数字はすべて2019年8月26日現在)。これだけ盗塁の精度が高いのなら「どうぞ走ってください」である。
ちなみに、昨年まで「タナキクマル」トリオを組んでいた広島・田中広輔の盗塁成功率は.672(119盗塁58盗塁死)、巨人の丸佳浩は.676(150盗塁72盗塁死)。3回に1回アウトになっている。山田の成功率の高さが分かるだろう。
そんな山田は今季、「足」で歴史的な記録を樹立しつつある。