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楽天の打撃職人・銀次、好調の秘訣。
バットは不変、フォームは変幻自在。
posted2019/08/27 08:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kyodo News
それは、後半戦に入って間もない7月19日のことだった。
なんすか、なんすか?
楽天の銀次は、こちらの質問を待ち構えるように連呼する。その顔はまるで、何を聞かれるのか分かっているようであったし、実際にそうだった。
――打率が3割に達したが。
それまでも銀次は2度、3割に乗せたことがあった。ただ、最初は開幕直後だったし、二度目の7月上旬も3日で2割台に落ちた。
3度目の3割到達。この質問に銀次は、すぐさま切り返し、笑う。
「聞かれると思った」
こちらとしても、根拠があって聞いた経緯もあった。「良くも悪くもない」と、この時の状態を話した銀次に、再度仕向ける。
――後半戦に入って結果が伴い始めたのは、取り組みや考えがパフォーマンスと噛み合い始めたからではないか?
銀次の目は、この問いに対しても想定内だと言わんばかりに訴えているようだった。
「それはあると思います。日によって体のコンディションもプレーの感覚も変わるなかで、夏場は特に疲れが出てくるし、結果にも影響が出るから。そうならないような準備っていうのはオフからやってきたし、その貯金が今、活かされているのはありますね」
「感覚」の再現性を高めるために。
オフの取り組みの代表例を挙げれば、銀次は筋肉の質にこだわったトレーニングを行った。ウエートなどで体に負荷をかけることはもちろん、インナーマッスルや柔軟性も養うメニューを積極的に消化した。
シーズンに入ってからも全身のケアや効率的なサプリメントの摂取によって、維持に努めてきた。それが、銀次の言う「貯金」となって還元されており、パフォーマンスにおいて「感覚」の再現性を高める重要な裏付けにもなっている。
だからといって、銀次は貯金をただ切り崩しているだけではない。その運用は、彼の経験があってこそ成り立ってもいる。