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クラブ史上最高額で加入のルカクは
インテルをいかに進化させるのか?
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2019/08/19 11:30
新たにコンテ監督が率いるインテルに加入したロメル・ルカク。改革の重要なキーマンとなるのは間違いない。
16歳でプロ契約、18歳でプレミア挑戦。
190cm、94kgの巨漢だがスピードと敏捷性も備えており、試合中のランニングでは最高時速36km超のスピードを叩き出したことでも知られるフィジカルモンスターである。出身はアントウェルペン。5歳の頃にサッカーを始めると、9歳の頃にリールセからのスカウトを受ける。下部組織で腕を磨く間、70試合で116ゴールを挙げる。
現在、ラツィオに所属するジョルダン・ルカクは実弟だが、モチベーションを焚きつけないと練習しない弟に比べ、兄ロメルは自主的に努力を積むタイプだったという。
そんな彼は2006年、今度は強豪のアンデルレヒトに引き抜かれ、3年後に16歳でプロ契約を結んだ。2009-10シーズンからはトップチームに完全定着し、2年間で97試合に出場、41ゴールという戦績を残した。その活躍はディディエ・ドログバの後継者を探し始めていたチェルシーの目に留まり、18歳でプレミアリーグに挑戦することとなった。
その後、チェルシーでは定位置を獲得することができなかったが、エバートンに移籍すると才能が開花する。2014-15シーズンではUEFAヨーロッパリーグで8得点を挙げ得点王となり、2016-17シーズンはプレミアリーグで25点を挙げ得点ランキング2位に輝いた。
ルカクに惚れこむコンテ監督。
この活躍を見てルカクに惚れ込んだのが、当時チェルシーを指揮していたアントニオ・コンテ監督だったのである。クラブへ再獲得を進言したが、失敗。ルカクはマンUに移籍することとなった。
2年後、そのコンテを監督として招聘することに決めたインテルは、指揮官の積年の希望を叶えることにしたのだ。マンUも8000万ユーロを超える移籍金をエバートンに払ってルカクを獲得していたため、交渉は簡単ではなかった。さらにインテルの積年の宿敵であるユベントスからも横やりが入る。パウロ・ディバラのトレードをチラつかせて競合を図る彼らに出し抜かれて、一時期ユーべ移籍で決定か、という報道もなされていた。
しかし、ディバラがトレード移籍を拒否しユベントスへの移籍は頓挫。そこでインテルのジュゼッペ・マロッタCEOは再度コンタクトを仕掛け、難航していたクラブ間交渉をまとめた。仲介に動いていたのは、国際的な実績があり、インテルの多くの選手と付き合いのある敏腕代理人のフェデリコ・パストレッロだ。
「3度目のオファー提示でやっとまとまった。ロメルはインテルに来られたことに本当に満足している」とタフな交渉の様子を地元メディアに語っていた。