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セレソンに吹き荒れるブーイング。
コパで問われるチッチ監督の手腕。
posted2019/06/27 07:00
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
Getty Images
過去4度、自国で開催されたコパ・アメリカではいずれも優勝を飾っているブラジル。
1919年の初優勝から100年の節目を迎える今大会で、正念場に立たされているのが指揮官のチッチである。
1930年のワールドカップウルグアイ大会以降、世界で唯一全21大会に出場しているブラジル。そんなサッカー王国の歴史において、ワールドカップで敗退した監督が、続投したケースはロシア大会後のチッチが初めての例だった。
「フッテボウ・アルチ(芸術サッカー)」をこよなく愛するブラジルでは未だに故テレ・サンターナの信奉者は数多いが1982年のスペイン大会で敗れたテレは、一度その職を離れた後、1985年に監督に復帰。1986年のメキシコ大会でも指揮を執っていた。
ロシア大会で敗れてもなお、職を失うどころか、高い支持率を誇ってきたはずのチッチだが「安定政権」への風向きが、コパ・アメリカで明らかに変わり始めている。
チッチ就任後、初めてのブーイング。
6月14日に行われた開幕戦のボリビア戦。スコアレスで折り返したハーフタイム、会場のモルンビースタジアムには手厳しいブーイングが飛ばされたが、ちょうど3年前に就任したチッチが聞いた初めてのブーイングだったのだ。
「サッカー界には抗議の手段が存在する。我々はブーイングを好まない。ただ、それを受け入れなければいけない」と結果的に3対0でボリビアを下した直後の記者会見で指揮官はこう振り返った。
残してきた数字だけを見れば、依然、チッチの手腕が確かなことは明らかだ。
5対0で圧勝し、グループステージの1位通過を決めた6月22日のペルー戦はチッチにとって就任39試合目。その間、31勝2敗6分けで、失点はわずかに10。2失点を喫したのはロシア大会の準々決勝のベルギー戦のみという圧巻の安定感を残してきた。
ただ、チッチを取り巻くメディアや辛口の解説者はコパ・アメリカのメンバーが発表された当初から、公然と疑問の声を上げ始めていた。招集した23人中、ロシア大会のメンバーは14人。チーム最年長36歳のダニエウ・アウベスを筆頭に、34歳のチアゴ・シウバとミランダ、過去2大会のワールドカップで敗退した遠因と指摘されている34歳のフェルナンジーニョら、およそカタール大会につながると思えないベテランも招集。
峠の過ぎたベテランを揶揄する意味を込めた「大物たち」という表現を使い「大物たちがセレソンのベースに」という見出しをつけた新聞もあったほどだ。