ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
トーレス引退会見に見えた人柄。
仲間を信じ、ファンに愛されたFW。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/06/28 17:30
リバプールでジェラードとホットラインを築き上げたトーレス。当時の決定力とキュートさは鮮烈な印象を残した。
鳥栖の地で伝えていきたいこと。
そう考えると、「自分の中でパフォーマンスに対するレベルというものがある。この引退を決めた理由として、その自分のベストのレベルに到達できていないんじゃないかという疑問点があった」という今回の引退理由もしっくりくるものがある。
自分の体に、そして心に自信を持っていなければ、勇気ある仕掛けや、あの繊細かつ豪快なゴールは生まれない。そう考えて、彼は身を引くことにしたのだろう。
かくして鳥栖の地で引退を決めたトーレスは、友人であるアンドレス・イニエスタやダビド・ビジャと対戦する8月のヴィッセル神戸戦を最後にスパイクを脱いだ後も、鳥栖のアドバイザーを務めることを発表している。
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その中で、トーレスは「ユース、若手の育成に目を向けたい」と話していた。
「ヨーロッパの若手選手は本当に自信を持っていて、堂々と自分にできることを最大限にやっている。日本の選手は本当に高いポテンシャルを持っているが、自信を持てずにいることで自分にできることを見せきれていないように感じる。そこを伸ばすことによって、チームもクラブも強くなる。そこを伸ばすことが、自分にできることなんじゃないかと思っている」
引退会見でそんなことを語ったトーレスが、日本の若い選手たちに、愛情にあふれたリバプールでの日々に見せていたような「勇気」と「決断力」を伝えてくれるのではと、楽しみになる。
彼の薫陶を受けた“トーレス印”の勇敢なストライカーが、Jリーグで、日本代表で、そしてヨーロッパのリーグで活躍する日が、今から待ち遠しい。