球体とリズムBACK NUMBER
歓喜の「You'll Never Walk Alone」。
リバプールCL制覇にクロップも万感。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/06/02 12:30
胴上げされるクロップ監督がガッツポーズし、熱狂的なファンも沸く。この一体感と情熱こそがリバプールなのだ。
1年前の雪辱を果たすサラーのPK。
キックオフから30秒と経たないうちに、サディオ・マネに対応したムサ・シソコがハンドを取られてPKを献上。後ろの味方に指示を出すつもりで腕を上げたところに、セネガル代表アタッカーの浮き球が当たった格好だが、普段のシソコならボックス内で脇を締めない過ちを犯しただろうか。
モハメド・サラーはこのPKを正面に強く蹴り、ボールは左に飛んだGKウーゴ・ロリスの右腕の上を抜けて、ネットを揺らした。昨シーズンのファイナルでレアル・マドリーのセルヒオ・ラモスに腕を取られて転倒し、涙の負傷退場を余儀なくされたエースが、雪辱のための貴重な先制点を奪った。
以降はリバプールがハイプレスをかけ、トッテナムがそれを掻い潜ろうとする展開が少しは続いたが、互いにイージーミスが多く、決定的な場面は訪れない。
20歳にして2度目のCL決勝に出場したトレント・アレクサンダー=アーノルドは、緊張を感じさせなかった数少ないひとり。先制点以外で前半にゴールに迫ったシーンといえば、リバプールで生まれ育ったこのライトバックが17分に、対角線上に放った惜しいミドルくらいだった。
トッテナムはソン・フンミンが奮闘も。
後半に入ると、1点を追うトッテナムがすかさずチャンスを得る。再開後の2分、右サイドからキーラン・トリッピアーがファーサイドへクロスを送ると、落下地点に入ったデリ・アリはヘディングを叩きつけることも、折り返すこともできなかった。
負傷明けのハリー・ケインは動きが重く、クールな魔術師クリスティアン・エリクセンもらしくない姿を見せるなか、アジア人としてパク・チソンに続く2人目のCL決勝に出場したソン・フンミンは、スパーズに希望を与える存在になった。
75分にはスルーパスに抜け出して独走し、シュートモーションに入りそうなところで、ファンダイクに阻まれる。その5分後には力強いミドルを見舞ったが、GKアリソンのセーブに遭った。今シーズンのプレミアリーグで最少失点の堅陣を支えたふたりが、重要な場面でもっとも勢いのある相手を封じた。