ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
今季CL決勝は誰もがヒーロー候補。
トッテナムvs.リバプールを大展望。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/05/28 17:30
サラー、マネを生かすプレーが光るフィルミーノ(左)。強烈な3トップを相手にトッテナムはどう戦うか。
フィルミーノ潰しはシッソコの役目。
このように中盤にフラフラと下りてくるフィルミーノを、最終ラインと連係しながら“潰す”役目を任されるであろうスパーズの陰のキーマンが、ムサ・シッソコになる。
今季のトッテナムにあって、ソン・フンミンと並んでサプライズ的な大活躍を見せた選手が、シッソコだった。
2016年夏にニューカッスルから加入してしばらくは自軍のサポーターからも「Flop(失敗)」と批判され続けてきたが、夏の補強が1人もなかった今季、中盤に故障者が続出してチャンスを得ると突如としてハイパフォーマンスを見せ、マウリシオ・ポチェッティーノ監督の信頼を勝ち取った。
今や中盤の潰し屋として、縁の下の力持ちとして、彼のフィジカルを生かしたボール奪取とハードなプレッシングはチームに欠かせないものとなっている。
チームの攻撃の中心を担うクリスティアン・エリクセンは、「守備もできて、タックルも上手くて、ボールを運べる」シッソコは「相手にとって悪夢のような存在」とまで言い、彼の貢献を讃える。またそのエリクセンが「彼にボールが渡ると、僕のプレーにもスイッチが入る」と語っているように、シッソコは攻守のつなぎ役としても重要な役割を担う。
中盤のせめぎ合いにも注目したい。
そのシッソコがいる中盤のせめぎ合いが、この試合では間違いなくカギとなるだろう。クロップとポチェッティーノは、互いにインテンシティの高いプレッシングを戦術の肝とする監督同士で、いわゆる「ゲーゲンプレス」の真っ向勝負が見られること請け合いだ。
リバプールはワイナルドゥム、ファビーニョ、ジェイムズ・ミルナー(またはジョーダン・ヘンダーソン)の3センターが絶えずピッチを駆け回り、スプリントとタックルを繰り返す。
対するトッテナムは、シッソコに加えてエリクセン、デル・アリ、さらにケインと同じくケガからの復帰が望まれる「もう1人のハリー」ことハリー・ウィンクスといったあたりの先発が予想されるが、彼らがリバプールの凶暴なプレッシングをかいくぐってどれほどチャンスメークに寄与できるか。
プレスの波に飲まれてうまく前にボールを運べないようだと、準決勝で散ったバルサの二の舞になる。