ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
今季CL決勝は誰もがヒーロー候補。
トッテナムvs.リバプールを大展望。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/05/28 17:30
サラー、マネを生かすプレーが光るフィルミーノ(左)。強烈な3トップを相手にトッテナムはどう戦うか。
天敵ファンダイクを打ち破れるか。
昨年9月、ウェンブリーでリバプールが勝った試合では『BBC』の解説者が「ケインは満足にボールを蹴れなかった。彼に対応したファンダイクはあまりに強く、あまりに落ち着いていた」とコメントしたほどだ。
タックル、シュートブロック、空中戦、1対1の駆け引き、味方との連係による守備と、あらゆる面でファンダイクはケインを凌駕してきた。トッテナムにとっては、戦線復帰のエースがこの“天敵”を今度こそ打ち破れるかどうかが、試合の大きなポイントになりそうだ。
ピッチの反対側では、モハメド・サラー、サディオ・マネというプレミアリーグの得点王コンビが、トッテナムのゴールを襲う。
両ワイドからカットインして積極的にシュートを狙ってくるこの2人に対し、トッテナムは左のマネをキーラン・トリッピアーとトビー・アルデルバイレルト、右のサラーをダニー・ローズとヤン・ベルトンゲンが、しっかりマークを受け渡しながら封じなくてはいけない。
だが、リバプールの本当の危険人物は別にいる。
最高の“偽9番”フィルミーノ。
それはケインと同様、この決勝でケガからの復帰が予想されるフィルミーノだ。彼は今季のプレミア2度の対戦で、いずれもスパーズからゴールを奪っている。
さらにリバプールのファンにはすっかりお馴染みだと思うが、実はこの男こそ、ユルゲン・クロップのチームにおける最大の戦術的キーマンでもある。
ケインのように“9番”らしく次々とゴールを決めることはないかもしれないが、サラーとマネがゴールを量産する裏には、いつだってこの男の暗躍がある。
「オフ・ザ・ボールの動きにかけてはプレミアでナンバーワン」と彼を評したのはクラブOBで解説者のジェイミー・キャラガーだが、フィルミーノは自分が「ちょっと動く」ことで相手の守備陣形をずらすことができる稀有なセンスの持ち主だ。
いわゆる“偽9番”的な動きにかけて、今のサッカー界で彼の右に出る者はいない。クレバーで視野が広い彼がスッと中盤に引いてきたり、何気なくサイドに開いたりして相手DFを釣り出し、空けたスペースにマネやサラーが飛び込んでいくのがリバプールの攻撃の真骨頂だ。