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バルサの息の根を止めた5番手FW。
移籍を断りクロップを信じたオリジ。 

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寺沢薫

寺沢薫Kaoru Terasawa

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posted2019/05/08 17:30

バルサの息の根を止めた5番手FW。移籍を断りクロップを信じたオリジ。<Number Web> photograph by AFLO

欠場したサラー、フィルミーノを補って余りある大活躍。オリジはクロップの期待に応えたのだ。

クロップが目をかけた才能。

 4月に24歳になったオリジは、リバプールで不遇をかこってきた男である。

 彼は2014年のブラジル・ワールドカップでベルギー代表の一員として活躍し、同年に当時19歳でリールからリバプールへと引き抜かれた。1年間はローンの形でリールに残り、翌’15年からリバプールに合流し、これからのクラブを担う逸材として迎えられた。

 ’15年10月にリバプールへとやってきたクロップ監督も、オリジには目をかけていた。

「速さだけでなく強さも身につけろ」とアドバイスを送り、それを受けてオリジはフィジカルトレーニングを増やし、体のサイズをひと回り大きくした。サイドではスピードを武器に突破を図り、中央ではパワーを生かしてボールを収める攻撃のオールラウンダーとして、クロップ就任当初はさまざまな起用法に応えていたものだった。

 だが、そんな彼を不運が襲う。'16年4月、リバプールが宿敵エバートンを4-0で下したゲームで相手選手の危険なタックルを受けて(当時リバプールのファンの多くが激怒したタックルだった)、足首にひどいケガを負ってしまったのだ。

チャンスはくる。だから待て。

 それ以降、オリジはフォームを崩した。ケガが癒えた後もスランプが続き、クロップも「当時の彼はスピードも強さもあって傑出していたのだが、あのケガが彼の成長の妨げになってしまったことは明白だ。それから変わってしまった。自信を失って前のようなプレーができなくなってしまったんだ」と語っている。

 それもあって徐々に出場機会を失い、昨季は半ばリハビリのような形でヴォルフスブルクへのローン移籍も強いられた。だがそれでも、オリジはクロップにとって「いつも頭の中にいた選手」だった。だからクロップは、今季はオリジをチームに戻し、フィルミーノ、サラー、マネ、シャキリに次ぐFWの“5番手”扱いながら手元に置いてきた。

 チャンスはくる。だから待て。

 クロップの言葉を信じてオリジ自身も腐らず日々のトレーニングに打ち込んだ。1月にはウォルバーハンプトンやウェストハムへの移籍話があったが、これも断った。

【次ページ】 クロップのマネジメントの象徴。

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