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ポルトCL制覇の立役者デコが語る、
モウリーニョの狂気と今季の可能性。 

text by

沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2019/04/06 17:00

ポルトCL制覇の立役者デコが語る、モウリーニョの狂気と今季の可能性。<Number Web> photograph by Getty Images

ポルトのCL優勝によって、ジョゼ・モウリーニョは青年監督として一気に名を馳せた。

勝利への並外れた執念と情熱。

 そんな当時のクラブとチームを取り巻く状況を象徴するような、とっておきのエピソードを教えてくれた。

「ピッチ上ではジョルジ・コスタ、リカルド・カルバーリョらベテランがチームを統率し、自分も攻撃面のリーダーだった。しかし、最大のリーダーはやはりモウリーニョだった。

 彼の真骨頂は、勝利に対する並外れた執念と情熱であり、なおかつその思いを周囲の人々に共有させる能力にある。選手はもちろん、クラブ関係者全員を巻き込む。さらには、その熱が地元メディア、サポーターにも伝染するんだ。 

 2003年12月、エースストライカーだったデルレイが右膝の十字靭帯を断裂し、手術を余儀なくされた。普通なら復帰までに半年以上を要する大怪我で、以後の欧州CLへの出場が危ぶまれた。しかし、モウリーニョは有無を言わせない口調で、『我々は、必ず決勝まで勝ち残る。そして、その試合で彼をプレーさせ、優勝する』と言ったんだ。

 これを聞いたメディカルスタッフは、デルレイを欧州CL決勝に間に合わせようと必死になった。もちろん、デルレイ本人も目の色を変えてリハビリに取り組んだ。すると、奇跡が起きた。彼は欧州CLの決勝より前、準決勝第2レグ(対デポルティーボ・ラコルーニャ)にフル出場し、PKを決めてチームに勝利をもたらした。そして、決勝でもプレーして、優勝に貢献した。モウリーニョの狂気にも似た情熱が、不可能を可能にしたんだ」

セルジオ・コンセイソン監督の資質。

 では現在のポルトには、当時のチームが備えていたような“なにか”があるのだろうか。

「個性的な監督が強いリーダーシップを発揮し、チームをまとめている。ベテラン、中堅、若手がほどよく混合した年齢構成も似ている。攻撃的なスタイルを目指しながらも、勝利のためには守備も固める戦術的柔軟性があるのも同じだね」

 その個性的な監督、セルジオ・コンセイソンとデコはクラブやポルトガル代表で一緒にプレーした間柄だ。当時から、デコは彼に指導者としての資質を感じていたという。

「セルジオは右ウイングで、飛び抜けたスピードやテクニックがあったわけではないが、豊富な運動量、思い切りの良いシュート、勝負強さが持ち味だった。闘志を剥き出しでプレーし、仲間を叱咤激励していた。いずれ優れた監督になるだろう、と思っていたよ」

【次ページ】 カシージャスとペペが躍進の鍵。

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