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マンUを再建しうる最高の観察眼。
スールシャール、母国での修行秘話。
posted2019/04/06 17:30
text by
ヨーナス・ヤーベルJonas Giaever
photograph by
Getty Images
ノルウェーのスポーツ界において、2019年3月28日は特別な一日となった。この国で最も著名なフットボーラーが、おそらく世界で最も有名なクラブの監督に正式就任した日として――。
オレ・グンナー・スールシャールが、現役時代に11年間を過ごしたマンチェスター・ユナイテッドの指揮官に着任した。
ジョゼ・モウリーニョの後任として昨年12月に暫定監督として招かれ、ここまでに披露してきた見事な手腕が評価された形だ。ただその優れた能力は、彼がノルウェーで指揮していた頃から、すでに萌芽を見ていた。
スールシャールはユナイテッドでの現役生活の晩年から指導者の道に進むことを決意し、当時のチームを率いていたファーガソン監督のもとでコーチを始めた。引退後の2008年にはリザーブチームの監督を任され、プレミア・リザーブリーグなどのタイトルを獲得。2011年には現役時代を過ごした古巣のモルデに、ファーストチームの指揮官として招聘された。
古巣の空気と慣習を一変させた。
ノルウェー海に面した街を本拠とするモルデはその年、創立100周年を迎えていた。しかしその長い歴史上、1部リーグを制したことは一度もなく、2位に終わった回数は実に7回。長きにわたり、脇役の座を抜け出せずにいた。
スールシャールはそんな古巣の空気と慣習を一変させた。自身がトップ中のトップレベルで体得してきた勝者のメンタリティーを植え付け、練習グランドには新たな手法を持ち込んだのだ。
1990年代のノルウェーで成功を収めた“ドリロ・フットボール”──ノルウェー代表などを率いたエギル・“ドリロ”・オルセンが広めたフィジカル重視の直線的なスタイル──を見直し、地上でパス&ムーブを繰り返す能動的なフットボールを標榜。選手たちには自らを生き生きと表現することを奨励した。