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「ポスト坂本勇人」の遊撃手を!
巨人・吉川尚輝の天才性とは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/03/15 17:30
今季の飛躍が期待される吉川尚輝。2016年、ドラフト1位で巨人に入団。昨季は92試合に出場した。
スピードを生かしたその守備は絶品!
「今は二塁もショートもできる選手はそんなにいない。しかも動きに制約のある二塁より、ショートの方が吉川の持っている能力はより出しやすいとは思いますね」
こう語るのは、昨年まで巨人の内野守備走塁コーチとして吉川を指導してきた日本代表の井端弘和コーチだった。
「吉川の一番の持ち味はやっぱりスピード。三遊間の当たりや、前の打球へのチャージなど、そのスピードを存分に生かした守備ができる。ショートを守らせたときの守備範囲の広さでいけば、今はもう坂本(勇人)より広い。尚輝のスピードを守りで生かせるという点では、ショートは一番のポジションだと思います」
実はこれは巨人でも、チームの将来像を描くときに、大きなカギとなる問題なのだ。
坂本には負担が多いショートの守備。
「いずれは勇人が三塁に回るときがくる。そのときのためにどういうチーム作りを考えていくかということです」
昨年のドラフトで大阪桐蔭高の根尾昂内野手を1位指名した背景を、原辰徳監督はこう説明した。
残念ながら根尾は抽選で外れて獲得はならなかったが、昨年の監督復帰の時点から指揮官の頭には、将来的な内野の布陣として坂本は三塁という構想があるわけだ。
2016年、'17年とゴールデングラブ賞を受賞しているように、坂本も決して守備が下手な選手ではない。むしろうまい部類の選手である。
ところが守備での貢献度、守備範囲の広さの指標とされる「UZR(アルティメット・ゾーン・レーティング)」は2015年の32.3(数字はデルタ社サイト)を頂点に、'16年の15.1、'17年の10.6となり、昨シーズンは10.0。この数字も、昨年の12球団の遊撃手では西武の源田壮亮内野手(30.9!)に次いで2番目の数字と平均以上のレベルは十分に維持してはいるが、それでも長らく下降線をたどっている事実は隠しようがないところなのである。