「あ、大学ってすごく楽しそうだな」

「中学生の時に、兄が法政大に進学することもあって、母親が『こういう世界も見ておいたほうがいい』って言って、一緒に東京の複数の大学を見学しに行ったんです。俺はそこで『あ、大学ってすごく楽しそうだな』と思ったんです。それがずっと頭に残っていて、大学に行けばいろんな外の世界を見ることができると感じたんです。なので、中学の段階で『俺は高校サッカーで活躍をして、サッカーで大学に行くしかない』と思っていました。

　青森山田に行った時も、最初の目的は3年生で選手権に出て、ある程度有名な大学に行くというのが俺のプランだった。

　それが代表に入ったことで、かなり前倒しになって、プロの話も舞い込んできて……。ちょっと予想外だったけど、やっぱり目的意識が明確だったので、いくら話が来たからと言って、それに飛びつくのではなく……。なんやろ、自分の中の明確な考えだったし、俺は一度決めたら変えないんですよ。超頑固なんです。一度決めたら何を言われても動かない性格なので、大学進学を選んだんです」

飲み込んだ「プロに行きたくない」。

　筆者は彼が高校時代によく青森に取材に行き、進路についても色々話し合った。

　当時から高卒プロでも十分に通用する能力と実力を持っており、正直「なぜ目の前にチャンスがあるのにチャレンジしないのだろうか」と思っていた。

　当時、彼は「まだ自分はプロで通用する自信がないんです。大学でしっかりとサッカーと人間形成にも力を入れて、4年後に勝負をしたい」と口にしていた。以前、その真意を彼に問うた時があった。その時、彼はこう答えていた。

「当時、『プロに行きたくない』とは言葉にしたくなかったんです。どんな人に対しても、『プロに行きたくない』と口にしてしまったら、『それは真面目にやっていない』とか、『大学で遊びたいだけ』と言われてしまう。

　もちろんサッカーで有名になりたいと思っていたし、サッカーで成功したいと思っていた。けど、人生それだけじゃないと思った。大学に行ってもっといろんな自分の可能性を見たいと思ったし、なにも社会を知らないまま高卒でプロになるのはどうかと疑問を抱くようになったんです。

　サッカーを引退した後も大事で、むしろその先の人生の方が長いし、もっと多くの可能性を自分に見出していたかったので、大学経由でプロになるという当初の意思を尊重したんです」

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