甲子園の風BACK NUMBER
選抜不出場でも大阪桐蔭の美音が!
東邦アルプスで異例の助っ人応援。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2019/02/22 08:00
今や甲子園の定番と言える大阪桐蔭のブラバン。チームは不出場でも東邦の応援で鳴り響く!
交流がなくても「ええで~」。
市尼の友情応援が叶わなくなり、次はどこに頼めばいいだろう……と考えると、大阪桐蔭以外思いつかなかった。「日頃から東邦の応援動画をよく見ている」という岩山氏も「甲子園慣れしている学校であの応援を再現できるのは、大阪桐蔭くらいちゃいますか」といい、思い切って吹奏楽部総監督の梅田隆司氏に聞いてみることにした。
東邦と大阪桐蔭の吹奏楽部は、まったく交流がない。「東邦が困っている」、「最悪、野球部のマネージャーが1人でトランペットを吹くことも考えているとのこと」と梅田氏に事情を説明したところ、「ええで~」とその場で快諾してくれた。
「大阪桐蔭に友情応援なんて頼んでもいいのだろうか」と緊張しながら電話をかけたのだが、拍子抜けするほどあっさりと引き受けてくれた。「ただ、俺はええけど、野球部や校長に聞いてみないとわからないから、ちょっと待ってや」と続けた。
翌日連絡があり、「東邦の野球部には練習試合などで普段からお世話になっているので、ぜひ応援してあげてください」と、野球部の有友茂史部長は即答し、西谷浩一監督と今田悟校長も快諾してくれたという。大阪桐蔭が選抜に出場した場合に備えて、吹奏楽部が期間中のスケジュールを空けていたというのも決定打となった。
東邦の理事長も思わず感激。
演奏会やイベントなどで年中忙しい吹奏楽部が、東邦マーチングバンドの不在期間中、全日程応援に駆けつけることができるというのだから心強い。
「甲子園の常連校が常連校を応援する」というのは、前代未聞であろう。東邦学園理事長の榊直樹氏に伝えたところ、「さすが横綱・大阪桐蔭。なんと懐が深いのでしょう……。こんな奇跡が起きるなんて感激です」と話していた。
2月17日、大阪のフェスティバルホールで開催された大阪桐蔭吹奏楽部の定期演奏会に、東邦の榊理事長と佐々木泰裕校長の姿があった。交響詩「魔法使いの弟子」(P.デュカス)を舞台仕立てに演出する「魔法の『夢』の世界」や、恒例の「甲子園応援リクエスト・コーナー」など、約170人の部員による圧巻のステージに、会場全体から拍手と歓声が鳴り止まない。
榊氏と佐々木氏も感激の面持ちでスタンディングオベーションしていた。