“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
高校選手権優勝の陰のMVPでは!?
青森山田・天笠泰輝に絶賛の声。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/01/28 08:00
攻守ともに青森山田のキーとなるプレーを連発していた天笠泰輝。大学卒業後のプロ入りが待ち遠しい。
高校2年時、サッカー界から消えていた!?
結局、念願の青森山田入りを果たした天笠。すぐに頭角を現し、高1の時にチームがインターハイに出場すると、1年生で唯一メンバーに入ってスタメンで活躍。
2回戦の立正大淞南戦で2ゴールを叩き出すなど、ベスト4入りに貢献した。
プレミアリーグイーストでもスタメンを経験し、初優勝を果たした選手権では檀崎と共にベンチ入り、3回戦の聖和学園戦では途中出場している。
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当然、高2では主軸となるべき存在だったが、「高2の1年間は、高校サッカーから消えました」と語ったように、彼にとって2017年は「地獄の1年」となってしまった。
「このまま終わってしまうんじゃないか」
4月に右足首を負傷し、2カ月の離脱。6月に復帰をするが、今度は7月に右膝の内側側副靭帯を伸ばしてしまい、そこから4カ月離脱を強いられた。
「僕の中で高2はプロになるためには重要な1年でした。それが怪我で全然活躍できずに本当に苦しかった。『このまま終わってしまうんじゃないか』と思って、落ち込んだ事もありました」
そこで天笠の支えになったのが、後にTwitterで彼を賞賛していた郷家だった。
天笠と同部屋だった郷家は、1学年下の彼を2年間、弟のように可愛がった。
「泰輝は他人想いの優しい性格で、本当に可愛い奴なんですが、サッカー選手としてもずば抜けたセンスを持っている選手で、僕の中で『一番プロに近い存在』だと思っていた。
泰輝は僕と本当に似ていて、見えている世界が一緒なんです。僕はプレー中に人が見ていない所を見ているのが好きで、そこを活用して崩していくプレーを得意としているのですが、例えば試合や練習でも『あそこは僕しか見ていないだろうな』と思っていたら、実は天笠も見えていて、『あそこに出せたよね?』と言ってきて、驚くことが何度もあったんです。初めてイメージが共有できる選手だと思った」
郷家は天笠に対して、後輩としてと言うより、同じ感覚を持つ選手として、大きなリスペクトを抱いていたのだ。だからこそ、郷家は天笠と分け隔てなく意見をぶつけ合い、彼のサッカー観に絶大な信頼を置いた。
神戸で1年目からレギュラーの座を掴み獲り、 U-19日本代表でもプレーをする郷家にそこまで言わしめるほど、天笠のサッカーセンスはずば抜けていたわけだ。
「郷家さんは本当にいろんな話を聞いてくれたし、その度に励ましてくれた。辛くて郷家さんの前で号泣した事もありましたが、本当にいつも優しく接してくれた。
『お前ならできる』とずっと言い続けてくれたことが、本当に折れそうな心を支えてくれた」(天笠)
高2の1年間はインターハイではベンチ外。プレミアリーグイーストも出場1試合で僅か2分。選手権はベンチに入るも出番無し……と、全く陽の目を見る事無く終わった。だからこそ、高校最後の1年は彼の中で「勝負の1年」だったのだ。
だが、一度狂った歯車をもとに戻す事は至難の業だった。
新チームで彼は【4-1-4-1】のアンカーのポジションを任されたが、攻撃のセンスは発揮できても、肝心の守備で課題が出てしまったのだ。